都市計画決定から何十年も経過した未整備の都市計画道路について東京都が、重い腰をあげて見直しの検討を始め、東京における都市計画道路の在り方に関する基本方針(案)」として2019年8月12日まで意見を募集しています。
まずは、私が東京都に提出した意見をこちらに公開します。
東京都の都市計画道路整備に関する方針は、約10年おきに優先整備路線を決めるという方針で進めています。都市計画決定といっても、ほとんどの計画が1968年に現在の都市計画法に改訂される前の旧都市計画法時代に都市計画決定されています。50年以上前に都市計画決定された計画を何十年もかけて整備していくというのが東京都の一貫した方針でした。計画決定されている土地利用の規制が緩く、住宅地になってしまっている予定地も多々あり整備に膨大な税金と時間が費やされています。
現在、2016年度3月に東京都と23区、26市2町で策定した 東京における「都市計画道路の整備方針(第四次事業化 計画) 」で決められている優先整備路線に基づいて整備が進められています。 この第四次事業化計画で見直し候補路線となったのは、わずか9路線、4.93㎞。見直しはする意欲が感じられないというのが2016年3月時の東京都の方針でした。
第四次事業計画には、人口減少には触れつつも、「東京においては、人口が減少に転じても、日本を牽引する社会経済活動や物流ニーズの多様化、余暇活動などによる人々の交流など、引き続き活発な都市活動を維持していかな ければなりません。そのため、東京の都市活動を支える都市計画道路の整備を進め、将来人口の動向を見据え、バス交通の充実や安全な歩道設置などにより、移動の円滑性を高め ていく必要があります」とあくまでも、整備ありきの姿勢でした。
ところが2019年の「東京の都市計画道路の在り方に関する基本方針(案)」では、3年しか経過していないのに、第5章の今後の進め方には、「 今後とも必要な都市計画道路の整備を着実に進めると同時に、社会経済情勢の変化や道路に対する都民ニーズを踏まえ、都市計画道路の不断の見直しを行っていきます。 」という記述があり、都民のニーズを踏まえ見直しをすると言っています。文面通りとって良いのか、見直しを求めている国交省に対するポーズなのか、よくわかりませんが、見直しをするということで大変驚いています。
以下の流れで、東京都の取り組みを見ていきたいと思います。
目次
見直しの対象となる路線は?
対象となる路線は、 1,415 路線、3,213 ㎞(平成 29 年度末時点)の都市計画道路 のうち、第四次事業化計画で優先整備路線に指定されなかった路線535㎞です。予定地に幅員は計画より小さいものの既存道路がある既成道路約235㎞と、まったく現道がない現道無道路300㎞を対象として見直しを行う方針を発表しております。
見直しのポイントとして、以下の4つをあげています。
- 概成道路における拡幅整備の有効性の検証
- 交差部の交差方式等の検証
- (都市計画公園等との)計画重複等に関する検証
- ( 既存道路による代替可能性 による)地域的な道路に関する検証
の4つが挙げられています。
既成道路の拡幅整備については、既存の道路があるものの都市計画道路の設計の幅員を持っていない道路について、計画通り拡幅しなくても車道および歩道が機能を満たしているかを検討して、現道に併せるか、計画通りに拡幅するかを検証しています。区部市部併せて、11路線が見直し候補になっています。
交差部の交差方式等については、交差点で幅員が膨らんでいる部分や、左折用の支線などが計画されている都市計画道路で、あえて幅員を広げなくても計画を満たすことが出来るかどうかの検証をしています。区部市部併せて、11路線が見直し候補になっています。
(都市計画公園等との)計画重複等については、芝公園、 有栖川宮記念公園 、 善福寺川緑地、玉川上水緑地 、 昭和公園など主に公園や史跡と交差する都市計画道路について検証です。「双方の事業化に支障とならないよう 国指定の史跡・名勝、鉄道、調節池を所管する関係機関と調整を行い、これを踏まえ、都市計画道路又は都市計画公園等を都市計画変更する方向性」としており、 必ずしも都市計画変更を行うものではないようです。 該当する公園に必要な機能(レ クリエーション機能、防災機能、環境保全機能、景観形成機能)の確保を前提に、個別に調整、また開園している公園については、既存の緑や 景観、公園等の機能にも配慮、道路構造による対応の可能性を検討と表現しており、見直しというよりは共存するための検討という方が正しいかもしれません。 区部市部併せて、58路線が対象となっています。この対応がどこまで公園等に考慮されたものになるかわかりませんが、これまでの東京都の都市計画道路整備は、自然環境への配慮と言うものは、「計画通り整備ありき」で沿道の植栽等で配慮したという実態であることを考えると、大きな進歩と言えるでしょう。例えば玉川上水との交差部分については、地下化するなどの配慮を期待したいと思います。
( 既存道路による代替可能性 )による地域的な道路に関しては、 近くを通っている道路で代替の可能性がないかの検討をしています。町田市の1路線だけが対象となっています。
私の意見です。
本質的に見直したと言えるのは、全体でこの1本だけです。他の見直しは、計画変更というのがふさわしい軽微な見直しなので、全体的に今回の見直しが積極的かというとそうではないと言わざるを得ません。
多摩地区の見直しに取り組んでいる市は?
区部は全部で14件、多摩地区の市では、八王子市(2)、日野市(2)、立川市(1)、町田市(1)、福生市(1)、国立市(1)、武蔵野市(1)計11件、合計23件と積極的に見直ししたとは言い難い結果ですが、26市あって、7市にしか見直しがないというのは、残念ながら本気で見直しに取り組くんでいるとは思えない状況です。
以下、私の意見です。
そもそも都市計画法では、 都市計画法15条五に記載されている通り、「一の市町村の区域を超える広域の見地から決定すべき地域地区として政令で定めるもの又は一の市町村の区域を超える広域の見地から決定すべき都市施設若しくは根幹的都市施設として政令で定めるものに関する都市計画」は、都道府県、それ以外は、市町村が定めるとされています。 新規に策定する都市計画は、このように法律で権限が分けられています。
「東京における都市計画道路の在り方に関する基本方針(案)」の検証結果に、 検証結果に示されている青線で示された「広域的な道路」が東京都が見直すべきで、赤線で示された「地域的な道路」 は、特別区、市町が見直すべき内容であると言えると考えます。もちろん 「地域的な道路」 は近隣市にも接続していますので、近隣市との協議が必要となりますが、それも含めて権限移譲して、かつ、各市町村の市民の声も一定程度、反映して検証すべきではないでしょうか?
(都市計画公園等との) 計画重複等に関する検証について、優先整備路線については?
私の意見です。
必ずしも都市計画変更を行うものとしてとらえておらず、 該当する公園に必要な機能(レ クリエーション機能、防災機能、環境保全機能、景観形成機能)の確保を前提に、個別に調整、また開園している公園については、既存の緑や 景観、公園等の機能にも配慮、道路構造による対応の可能性を検討とするという位置づけであることは既に説明しました。であるならば、なぜ第四次事業化計画における優先整備路線で、計画が重複する路線については、同じように検討できないのか?まだ、優先整備路線に指定されたものの事業化に至っていない路線はたくさんあります。これらについても、同じく検討すべきではないでしょうか? 該当する公園に必要な機能(レ クリエーション機能、防災機能、環境保全機能、景観形成機能)を確保するために、東京都26市2町は行うべきです。
例えば、第四次事業化計画で、パブリックコメントの総数は4126件のうち、No.78項の、小金井 3・4・1 号線には1,081件(推進要望は24件、廃止見直しは1,057件)、No.79項の小金井3・4・11号線外には1,030件(推進要望は46件、廃止見直しは984件) と圧倒的に多くの見直し意見が寄せられました。 国分寺崖線、野川、武蔵野公園という緑地帯を無遠慮に東西、南北に交差する計画で、まさに公園に必要な機能(レ クリエーション機能、防災機能、環境保全機能、景観形成機能)が破壊される計画です。にもかからず 小金井3・4・11号線 については事業化に向けての説明会が始まっています。東京都の方針が、変わったのたのであれば、事業化に至っていない(都市計画公園等との) 計画重複等に関する検証については、対象に加えるべきではないでしょか?
小平市内の都市計画道路はどんな見直しをしているのか?
小平市の都市計画道路の既成道路と現道無道路はこちらになります。
残念ながら、「検証の結果該当するものがない」と書かれています。
同じく(都市計画公園等との) 計画重複等に関する検証についても同じく検証対象は0件になっています。
小平市には、市内最大の観光資源である玉川上水があります。事業化されておらず第四次事業化計画でも優先整備路線に指定されていない都市計画道路で、 小平3・3・3号線(新五日市街道)、小平3・4・20、小平3・4・22、小平3・1・2(五日市街道) が玉川上水と交差する計画です。 三鷹市では、同じく玉川上水緑地と交差する三鷹3・4・12と三鷹3・4・13と交差する路線として挙げられています。同じく杉並区の補助 128 号線、補助 133 号線についても、玉川上水緑地と交差する路線として、検証結果 にあげられています。 小平市の玉川上水の景観のよさや、素掘りで残されている遺構として価値は、三鷹市や杉並区の玉川上水に負けていません。小平市の小林正則市長も2012年の玉川上水サミットで、 次の世代に玉川上水を継承すると宣言していますのでなぜ、検証の対象から外れているのかわかりません。小林市長の与党会派の市議はここでチェック機能を働かせるべきではないでしょうか?
以下、私の意見です。
東京都の定めた検証のルールが1本化されていないか、小平市が玉川上水緑道と都市計画道路の交差について問題提議しなかったかのどちらかです。市議会議員は、市議会で是非問題提起してもらいたいものです。事なかれ主義で市議会でスルーするので役割を果たしていることになりません。改めて書きますが、 (都市計画公園等との) 計画重複等に関する検証 は、都市計画道路の整備そのものを否定するものではありません。 該当する公園に必要な機能(レ クリエーション機能、防災機能、環境保全機能、景観形成機能)の確保 のために検討をことが目的です。玉川上水の景観を守りながら、都市計画道路を整備する方法としては、都市計画道路を地下化する方法も考えられます。例えば、交差するのは玉川上水ではなく鉄道ですが、小川駅南側の東西道路である小平3・4・10号線は、西武国分寺線、西武拝島線と交差しますが、約60億円~65億円かけて地下化する都市計画変更を行い事業化が検討されています。
まとめ
東京都は、 2016年3月に 東京都と23区、26市2町で策定した 東京における「都市計画道路の整備方針(第四次事業化 計画) で優先整備路線に指定されなかった約535㎞について、2019年には、東京の都市計画道路の在り方に関する基本方針(案) で、 「整備すべきものは整備し、見直すべきものは見直す」 として見直しのための検証を開始しました。
また、(都市計画公園等との) 計画重複等に関する検証として、必ずしも都市計画道路を見直しではないものの 該当する公園に必要な機能(レ クリエーション機能、防災機能、環境保全機能、景観形成機能)の確保を前提に、個別に調整、道路構造による対応の可能性についても検討するという方針を示して、これまでのような、都市計画道路の整備のためには自然環境の破壊には無遠慮な姿勢を改めるようです。
但し、公園等との重複については、東京都の特別区、市町でルールが統一されていません。例えば、玉川上水と交差する都市計画道路について、三鷹市と杉並区では、 公園等との重複 の検証が行われる予定ですが、小平市の四路線については、検証の対象になっていないなど中途半端な対応になっています。
以上(2019年8月1日)