小平市 政治・社会

新型ウイルスと共存する世界

投稿日:2020年5月24日 更新日:

このブログを書いているのは2020年5月下旬。「新型ウイルスと共存する世界」として近未来について書いてみることにしました。

新型コロナウイルスが変異して第二波として感染が広がっているという事実から、ウイルスが生き残れる形で姿を変えて拡がり長期戦となることが予想されています。タイトルを新型コロナウイルス(COVID-19)に限定しなかったのは、今後も違うウイルスが拡がる可能性もあると考えたからです。国立感染研究所の感染症情報センターのQ&Aにも、過去のパンデミックとして、1918-19年のスペインインフルエンザ、1957-58年のアジアインフルエンザ、1968-69 年の香港インフルエンザなどを取り上げています。

実は、近年もSARSや鳥インフルエンザのように、同じような事例はあったものの、たまたま収束させることができたと考えるのが正しいのではないでしょうか。自然災害もそうですが、人類が何でも制御できるというのは思い上がりで、そうではないことがたくさんあるはずで、そのうちの一つが新型コロナウイルスであると考えることにしました。

暗い未来ですが、新型ウイルスと共存していくしかありません。世界が変わるチャンスでもあるとも考えるようになりました。今回は以下の流れでブログを書きたいと思います。私の想像の世界であり、大きく外れるかもしれませんが、外れたら外れたほうが良かったということで開き直りたいと思います。

折り合いをつけてやっていくしかないことに皆が気付く

米国、ヨーロッパでは、新型コロナウイルスの脅威が続いている中でも徐々に経済活動、教育、文化スポーツ活動も再開していますが、日本でも間もなく折り合いをつけて再開する時期が来ます。

外食産業、観光業、交通産業などサービス業が、直接的な打撃をうけて目立っていますが、やがて家賃未払などで不動産業にも波及、食品や日用必需品以外の製造業にも広がり売り上げが減って、雇用を守れなくなる事態が来ます。感染者数や、死亡者数は減少しますが、ウイルスは形を変えて拡散していますのでゼロにはなりません。

世論の方から、経済活動再開という論調に変わっていきます。しかし、セーブした形での経済活動の再開となります。マスク、アルコール消毒などに加えて、建物に入る前には非接触型の体温計があり体温測定する、飲食店では人と人の距離を取ってなど、一定のルールとともに経済活動は再開されるでしょう。空港や、新幹線の乗り場の入り口でサーモグラフィーなどでの常時体温監視するなど公共の場での体調管理はより厳しくすることになるかもしれません。

これからも新型ウイルスで死ぬ人はいます。人々は死を身近に感じるようになります。慣れてしまうというか受け入れざるを得ないものとなるでしょう。株価は、米国も日本も2020年5月現在なぜか維持していますが、税収は減って、経済はボロボロになるでしょう。恐慌と呼ぶべき事態になるかもしれません。

約90年前の世界大恐慌は、1929年に始まり1930年代後半まで続きました。世界のGDPが15%減少したと言われておりドイツ、イタリア、日本で、極端な国家主義思想が受け入れられた一つの要因になりました。その後、世界は第二次世界大戦に向かっていき、多くの人命を失いました。そして戦勝国は戦争特需で危機を乗り切り、日本など敗戦国は、戦勝国の統治下で国の仕組みを作り直して経済を立て直しました。

2020年の新型ウイルスパンデミック恐慌ではどうなるでしょうか?

人口拡大・経済成長を前提とする政策の見直し

新型ウイルスと言う人類の新たな敵が現れることで国家間の緊張はほぐれます。今回のウイルスの原因について、ゴシップも含めて米国が中国を非難し争いにはなっていますが、とはいえ、武力による戦争にはならないでしょう。新型ウイルスと向き合うことがより重要になり各国の軍事費も縮小するでしょう。つまり1929年の世界大恐慌の時のように戦争には向かわないと予想します。財政が厳しくなりより国内に目を向けるようになるでしょう。

新型ウイルスパンデミックが始まる前から、自明のこととして、誰もが知っていることは、日本の人口が減少していると言うことです。

図1.国土交通白書 2012年度版より抜粋

国土交通白書2012年度版第一章によると、今から30年後の2050年には人口は、9708万人に減少すると予測しています。出生率は下がり続けており、間違いなく人口は減少していきます。

新型ウイルスでの経済活動の停滞で、国、地方自治体の税収が減少します。どんなに日銀が日本株購入(ETF購入)で買い支え、国債を引き受けても、耐えられなくなり国家予算をとうとう縮小させることになります。戦後、一貫して人口増加、経済拡大で進めてきた政策を見直すタイミングが来ます。

1929年の世界大恐慌時、米国ではニューディール政策で公共工事を増やして乗り切ろうとしました。今回の日本で言うと、リニア中央新幹線、津波対策の防波堤、ダム、スーパー堤防、外環道など高速道路、辺野古基地などの整備がそれにあたるかもしれません。ニューディール政策的な旗振りをする政治家も出てくる可能性はありますが、日本の世論は公共投資で雇用創出するという政策は支持を得られないと考えます。つまり多くの公共事業は見直されるでしょう。

成熟社会である日本のインフラ整備の費用対効果が大きくないことは国民も実は既に気付いています。国民の生活が厳しくなり、死が身近なものとなっており、経済成長しつづけるという無理なシナリオは、賛同が得られなくなります。どこかでターニングポイントが来ます。

国内外で増加している異常気象による自然災害は、その多くがどう手を打っても防げるものではなく、根本的な対策を考えなくていけません。ダムや堤防をつくり続けることではなく、国土計画・都市計画の見直しが必要です。長期的には、ハザードマップをさらに発展させて、人が住んで良いエリアとそうではないエリアを分けていくような規制をつくり誘導して行く必要があります。人口が減少していくこのタイミングで、時間をかけて計画すれば実現出来るはずです。

2050年に、9700万人になるための新たな国家プランが必要なります。縮小に向けての経済政策を担う政治は、現在よりさらに役割が重要になります。政治家を志す人材の質が高まっていきます。実業家から政界へ転身する人が増えるでしょう。最近もタリーズコーヒージャパンや和民の創業者などチャレンジする人がいましたが、少なすぎました。両名とも一期で引退していました。しかしこれからは、本当にまずい時代なので実業家で成功した人が政治の世界に一定程度の議席を占めるようになるでしょう。

図2. 人口増加・経済成長・グローバリゼーションの見直し、新しい国家観

新型ウイルスの影響を受ける産業と変化

今まであった仕事がなくなるまたは縮小してしまうため失業者は増えます。逆に新たな仕事も増えて、雇用も流動化していきます。すでに廃業が始まっていますが、観光業、宿泊業、外食産業は、縮小はさけられず、その一部は業態を変えていくことが求められます。

総務省統計局による家計調査2020年3月分によると、二人世帯以上の3月の家計に締める外食費用は、前年比▲33.2%と言う結果になっています。代わって食料品とくに米や麺類は、それぞれ+15.3%、+23%と増加しています。恐らく4月、5月はさらに外食費用は減少しているでしょう。

リモートワークがすすみ、廃業するサービス業も増えるため、都心への一極集中も少しずつ緩和されて、オフィス需要も減るため不動産の価値も全体的に少しづつさがっていくでしょう。

住宅政策については、新築の総量規制はかけられ、都市計画の用途地域もより厳格になり、新築物件は抑制的になるでしょう。30年程度で建て替えされることを前提とした住宅は減少して、50年、100年住むことが出来る質の高い資産性の高い住宅をつくように政策転換されていきます。フロー経済からストック経済へ代わっていきます。建物の資産価値は上がり、修繕して長くつかわれるようになるでしょう。不動産市場は、新築から中古市場が活発なるでしょう。

地方自治体の予算も縮小せざるを得ません。小平市の2008年度から、2017年度の一般会計予算の目的別の歳出について棒グラフにしています。

図3.小平市の2008年後から2017年度の一般会計予算(目的別分類、棒グラフ)

毎年予算が膨れ上がり2008年度は、500億円弱の予算が、2017年度には、約620億円。小平市の人口この10年間で17万8千万人くらいから19万千人まで増加傾向にありましたが市税収入はこの10年間300億円程度で変わっていません。しかし、予算規模は増加傾向にありました。その歳出の内訳をみると、社会保障の予算であることがわかります。社会福祉費、高齢者福祉費、児童福祉費、生活保護の4つが増えています。

実は福祉に関する予算以外は、横ばいか、減少傾向になっているのが実態です。これからはさらに厳しくなり、ゴミ処理にかかる清掃費や小中学校などの教育、消防費のようなものは社会が成り立つために必要な予算は、維持されますが、公共工事・土木系の予算や、公園、体育館、公民館・図書館・地域センターなど運営などの予算は削られることになるでしょう。

社会保障(福祉)の予算は、国の政策にひっぱられており、多くは国庫支出金、都支出金に支えられています。中でも児童福祉費が、一番増えていますが、図1にあるように出生率は上昇する気配はないのはなんとも皮肉です。

社会保障は国の最も重要な仕事の一つでありますが、国の財政が悪化していることは誰もが知っており、人口減少・高齢化で労働人口が減少していくため、財源を振り分けられなくなり、相対的に質を落とさざるを得なくなります。併せて補助金を前提にしている福祉関連の仕事は厳しくなるでしょう。これまでは海外から労働者を受け入れる流れでしたが、新型ウイルスで流れは変わるでしょう。ロボットなどの省人化するための技術革新などへ期待が集まるでしょう。

孤独死が増えていくことは避けられなくなりますが、ビジネスとして無縁墓地、海洋葬、樹木葬などのニーズを満たすようなサービスも新たに生まれてくるでしょう。児童福祉の分野では、孤児や片親になってしまった子供に対しては、里親や支援する子供のいない大人とのマッチングのようなビジネスの市場が新たに生まれるでしょう。

行政が役割を果たせなくなるところを補完する新たなビジネスも生みだされていくと予想します。困っている人を相手のビジネスになるため、対価を多くはとれないため、本業としてビジネスというよりは、副業としてのソーシャルビジネスが活発になるでしょう。

必要な予算が削られてこれまで担っていた仕事がなくなる分は、それぞれの地方で、支え合う社会になると予想します。小平市でも既にはじまっていますが、民間レベルの寺子屋のような教育活動をしている団体や、子供の遊び場を提供する団体、高齢者の居場所作り、子ども食堂のような活動が、行政の役割の一部をになっていくことになるのでしょう。

図4.新型ウイルスに影響される業界

そのほか地域レベルでの協業は、外食産業、とくに個人でレストランを経営している人などは、三密を避けるために席を空けるなどの状況が続いて、売り上げも限定的になります。デリバリーや、料理したものを別の場所で販売するような業態に変わらざるを得ないでしょう。デリバリーの仕事や、つくったものを販売する場所の提供、消費者のニーズと提供者をマッチさせる仕組みなどが新たなビジネスとして必要になるでしょう。

これらの新しい仕事は、情報・通信、AI分野、とくにソフトウエアの果たす役割が重要になります。地域間交流のジモティーのようなサービスもありますが、さらに地域を結びつける助け合うような新たなサービスはまだまだ足りずに必要になるでしょう。

業界転換を迫られる失業者となってしまう大人のためには、実践的な教育事業のニーズが高まります。とくに、ソフトウエアとデザイン分野などを中心にオンラインの大人向け教育事業はますます必要となっていくでしょう。

基本的なことが大事にされていく変化

農業、漁協などの一次産業の価値が高ります。食は人間が生きていくうえでも最も重要な要素の一つです。「食」と言う当たり前の基本的なことが大事されていきます。グローバリゼーションが抑制され、国内の生産農家の価値が高まります。そして無駄のない生産・流通が求められます。

グローバリゼーションの見直しを考えるとき食料の安全保障はもっとも重要で、農林水産省も「食料の安定供給に係るリスク分析・評価」として、リスク分析しています。自給率を見直す議論はきっと進みます。日本の食料自給率はカロリーベース37%、生産額ベース66%(2018年度)。他の先進国と比べて低いです。主食のコメ・小麦の自給率(2017年度)は、コメは94%と高いですが、小麦は14%と著しく少ないです。先にとりあげた二人世帯以上の3月の家計によると、米は1か月2,132円、パンは2,798円と、パンにかける支出の方が多いようです。グローバリゼーションから自国優先主義国に世界の潮流が向かっている中で、日本の国内の農業・畜産業・漁業などへの見方が変わるでしょう。

都市農業の価値はたかまるでしょう。2020年の3月に書いたブログ、都市農地を小平市の財産として守ろうにまとめていますが、これまで宅地化することが前提だった都市農業は少しずつ見直されてきてます。今回の危機から、都市農家の相続税の負担を軽減する税制の見直しもありえると考えています。

私は近所で援農ボランティアをしているため、都市農業の現状の一部を実体験として知っています。小平市の給食における地元野菜の利用率は3割近くまであがってきており、この点は素晴らしいのですが、実は人手や売り手の問題で、形の悪い野菜や、シーズンが終わるころ農作物は捨てられたりしています。農作物の生産そのものより、洗ったり袋詰めしたり売り場所の問題で、都市農業は十分に生かされていません。

しかしこれからは食料事情も厳しくなります。子ども食堂以外にも、炊き出しなどを行われるようになるかもしれません。必然として、収穫から都市農業を手伝い食材を確保するような交流も行われるようにでしょう。

もう一つ大事な基本的なこと、それは健康です。今回の新型コロナウイルス(COVD-19)では、既往症のある人が重篤化する傾向があります。逆に健康な人は重篤化しづらいようです。正確には症状が出ていない人はPCR検査をうけられないため実態はわかりませんが、健康な人が重篤化しないという傾向があるのは間違いないでしょう。福祉の予算は削らざるを得えない中で、高齢者の健康が行政にとっても重要な要素になっていきます。

健康にフォーカスしたビジネスのうちフィットネスクラブは、クラスタが発生したこともあり慎重な分野になると思いますが、外で行えるスポーツは注目されるでしょう。ランニング、ウオーキング、体操などは手軽に始められるのでとくに重視されるでしょう。身体を壊さない無理のないトレーニング方法や、ステップアップのためのトレーニングのアドバイスなど、ニーズは高まって行くでしょう。スポーツ観戦については、室内競技は厳しくなるかもしれませんが、屋外競技については、元にもどっていくでしょう。遠隔で応援できるVR観戦は5Gとともに必要性が高まるでしょう。

まとめ

  • 新型コロナウイルス(COVID-19)は長期化が予想されますが、それだけにとどまらず感染リスクが世界を変えるきっかけになります。
  • 日本では、人口拡大・経済成長を前提として政策の見直しするきっかけになります。
  • 税収が激減して、国や自治体が福祉に避ける予算も限定されるようになり国民の生活が厳しくなることは避けられません。縮小する業界、新たに成長する業界も出てきます。またローカルでの助け合いの活動はさかんになっていきます。
  • 基本的なこと、食べ物を国内で確保するための農業・畜産業・漁業などは、活発になるでしょう。都市農業も役割が高まります。健康という基本的なことも大切にされて、スポーツの価値も高まります。

以上(2020年5月24日)

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    小平市在住の50代男性のkamihooです。40歳から本格的にフルマラソンの大会に参加し始めて、2017年11月に48歳で大田原マラソンでサブスリーを達成しました。自己ベストは2020年1月の勝田全国マラソンの2時間54分37秒です。「ジョグのねっとわーく」でランニング日記をkamihooのアカウントで公開しています。https://jogno.net/

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