政治・社会

川辺川ダムが存在したら、令和2年7月球磨川豪雨災害はどの程度削減されたのか?

投稿日:2020年11月3日 更新日:

令和2年7月球磨川豪雨災害の検証が始まったいます。国土交通省八代河川国道事務所のホームページで球磨川豪雨検証委員会の第一回8月25日、第二回10月6日と検証資料と第一回の議事録が公開されています。

2020年7月20日に書いたブログ「2020年7月4日の球磨川氾濫と川辺川ダム」で球磨川水系の治水対策や、川辺川ダムの効果を、流速一定の素人計算で、7月4日の7:30AMまでの流量を多少検証してみました。それ以来、本当の流量はどのくらいだったのかが検証される情報を待っていました。

熊本県蒲島知事の発言は氾濫直後はダムによらない治水を極限まで追求するというコメントから、ダムによらない治水は難しいという発言に変わってきています。流域周辺の市町村長からの声も川辺川ダムを容認する、又は推進すべしという発言も多くなってきています

一方、川辺川ダムの反対をしてきて市民グループからは、川辺川ダムありきでの検討になっているという批判の声があがっています。市民グループは、ダムありきで議論するな、まず氾濫の検証をするべき、川辺川ダムの効果が過大すぎると言う主張をしています。

今回の国土交通省八代河川国道事務所で令和2年7月球磨川豪雨検証委員会の資料から、球磨川、川辺川の水量実績と、川辺川ダムの効果についての発表内容を検証して、最後に今後の球磨川の治水の進め方について自分の意見を書きたいと思います。

球磨川基本高水流量と観測所位置について

球磨川の基本高水流量は、2007年の球磨川水系河川整備基本方針以来更新されておらず、川辺川ダムありきの計画になっていて、その後更新されていません。本来ならダムよらない治水を前提に、基本高水流量を見直すべきでしたが、おそらく引提案、河道採掘等案、堤防強化案などの大方針が決まらなかったため、整備基本方針の高水流量計画を見直すに至らなかったのかと思われます。

図1.球磨川の基本高水流量
図2.球磨川計画高水流量図(m3/s)

図1の表が意味することは、計画策定時点では、氾濫発生時ピークの球磨川の人吉観測点で、7,000m3/s、横石で9,900m3/sとなる流量を、洪水調整施設である球磨川の市房ダムで500m3/sと、川辺川の川辺川ダムで2500m3/s削減して、合計して3,000m3/sカットして、人吉観測点で4,000m3/s、横石観測点で、7,800m3/sにする計画です。

国土地理院の地図でダムや、観測所の場所や被害場所を確認します。

図3. 市房ダムと、球磨川の多良木、一武、人吉、渡、川辺ダム(予定地)と柳瀬各観測所の位置(国土地理院の地図を編集加工

赤背景の白文字が各観測所の高水流量を入れています。青文字が球磨川、川辺川に合流する河川です。大きな青文字が観測所です。川辺川ダムは、中央の上、市房ダムは右中央に赤字で記載しています。緑の枠がついている青文字は、川辺川の流量観測所ですが、記録が公開されていないところです。オレンジ色文字が被害があった箇所です。

球磨川7月4日午前の実績流量について

市房ダムのピークシフト▲500m3/sは、下記のブログで検証しています。国土交通省「川の防災情報」の球磨川水系の市房ダムデータから、市房ダムへの流入量、流出量、貯水量をグラフにしているので、最大512m3/sカットしているので設計通り機能していました。

7月4日の市房ダムのオペレーションについてはこちらの図4参照

2020年7月4日の球磨川氾濫と川辺川ダムについて

11/4の早朝5:00AMから9:00AMまで1,100m3/sから600m3/s程度までピークカットしているのがわかります。

川辺川ダムは、完成しておらずオペレーションしていませんが、計画では、2,500m3/sのピークカットをする機能があるとされています。

表1 凍結中の川辺川ダム容量と球磨川上流の市房ダムの容量

 川辺川ダム(現在計画は凍結)(球磨川上流)市房ダム
総貯水容量 千m3133,00040,200
有効貯水容量 千m3106,00035,100
洪水調節容量 千m384,000(第一期) 53,000(第二期)8,500(6月11日~7月21日)

川辺川ダムの有効貯水容量は、市房ダムの約3倍の規模で、洪水調整容量は、梅雨期の(第一期)では10倍の84,000千m3では、約10倍、梅雨期でない時期(第二期)は、53,000千m3で約6倍の容量があり、市房ダムのピークカット▲500m3/sの5倍を達成出来そうな容量があります。しかし疑問点は二つあります。

  • 本当に川辺川ダム予定地の上流で、ピーク流量が2,500m3/sであったのか?
  • 川辺川ダム予定地から、柳瀬までの19㎞までで接続する河川、雨量で増水する流量は加味されているのか?という二点です。

令和2年7月球磨川豪雨検証委員会の10/20付けの参考資料「流量の推定について」のP31 には、球磨川の観測所における時間別流量グラフがあり、7月4日の午前のピーク時の水量がわかります。

図4.球磨川の市房ダム、多良木観測所、一武観測所、人吉観測所、川辺川柳瀬観測所水位

市房ダムでは、7月4日の7:00AMの最大1,150m3/sの流量を600m3/sにカットしてます。600m3/sの流量で12:00まで運用しています。市房ダムの約5㎞下流、最初の観測所多良木では、7:30AMが1,200m3/s、ピークは9:00AMで実績値は1,295m3/s、氾濫戻し流量が、1,429m3/sと推定しています。氾濫戻し流量は、球磨川が氾濫しないと仮定した場合の推定流量です。600m3/s以上に増水していますが、これは、小山内川、都川、仁原川が合流したことと流域の雨量による増水によるものと解釈できます。

次に約19km下流の一武観測所では、7:30AMは、約2,700m3/s、ピークが10:00前くらいにずれて実績値は3,000m3/sで、氾濫戻し流量が、3,256m3/sとなており、多良木から、さらに1,700m3/sほど増水しています。

次に、一武観測所の下流で、川辺川の合流後の人吉観測所の流量を見ると、7:30AMで実績のプロットが切れており、約5,200m3/sの流量となっています。この結果は7月4日梅雨前線に伴う球磨川水系の出水状況についてとして、第1報から6報までで「7月4日に球磨川の観測所による水位」が7:30が人吉の最後の観測になっており速報値とあっており、実績の約5,200m3/sのときが、氾濫危険水位LV.4を大きく超えた5.01mであったことがわかります。

川辺川の球磨川合流前の柳瀬観測所の水量も残っております。7:00AMから8:00AMくらいが2,900m3/sで、ピークの9:00AMが3,404m3/sが実績として残っています。

球磨川の人吉観測所では、約5㎞上流の一武観測所と、川辺川の柳瀬観測所の分が合流します。7:30AM時点では、一武が約2,700m3/sで、柳瀬が約3,000m3/sだったので合計すると5,700m3/sになりますが、人吉が5㎞ほど下流なので7:30AMの人吉の氾濫前の最後の観測記録の約5,200m3/sというのは理解できる測定結果です。なお、2020年7月20日に書いたブログ「2020年7月4日の球磨川氾濫と川辺川ダム」で、図7で人吉観測点での7:30AMの氾濫開始の流量は、5,238m3/sと計算しました。実測値とかなり近い計算になっていました。

さらに球磨川が南北に蛇行して左岸右岸が決壊した箇所の下流の渡観測所では、7:30AMが最後の観測で約7,500m3/sであることがわかっています。右岸からは、山田川、万江川、小川が合流して、左岸からは、胸川、永野川、鹿目川・草津川が合流している流量と雨量の増水分が1,800m3/sほどあったことがわかります。なお最大の被害があった特別養護老人ホームの千寿園は、右岸の小川沿いにあり、小川からの合流が球磨川への合流が出来なくなり5:30AMの時点で氾濫が始まっています。

このように、球磨川から市房ダム、多良木、一武、人吉、渡までは、7:30AMの実績ベースでも、約600m3/s(市房)→約1,200m3/s(多良木)→約2,700m3/s(一武)→約5,200m3/s(人吉)→約7,500m3/s(渡)と市房から約35㎞ほど下流の渡観測所までの間で、600m3/sが7,500m3/sまで増えています。これは、人吉市周辺が盆地になっており、球磨川が、一武観測所から渡観測所までに流れ込んでくる河川の受け皿になっていることが地図からもわかり、納得がいきます。

次に、川辺川を見ていきたいと思います。

川辺川流量と川辺川ダムが存在した仮定の流量について

川辺川の観測所は、全部で4つあります。五木宮園、四浦、県川辺、柳瀬の4か所です。リアルタイムの水位・流量を公開しているインターネットサービスが、国交省の川の防災情報です。インターネットブラウザでも見ることができます。過去一週間のデータを見ることが出来ます。災害直後にスクリーンキャプチャーすれば残しておけるのですが、いま見ても2020年7月4日の情報はとれません。

図5.川の防災情報の川辺川で検索した結果

もう一つが国交省の水文水質データベースです。こちらもインターネットブラウザでも見ることができます。五木宮園、四浦、柳瀬の3か所があります。この情報は過去の情報を公開されますが、2020年11月現在、2019年、2020年の情報が公開されていません。

図6.水文水質データベース、川辺川の水位流量観測所

観測所がある以上、国交省は2020年7月4日の川辺川の五木宮園、四浦の流量データをもっているはずです。ところが令和2年7月球磨川豪雨検証委員会で、川辺川の流量についてまとめた資料は図4の柳瀬観測所の実測値9:00AM時点で、3404m3/sのグラフのみが出てきます。川辺川ダムが存在した場合の効果の推定についてという資料のP3にも、同じ川辺川の柳瀬観測所の時間経過の流量を元に、川辺川ダムが存在した位置での流量の推定がでてきていますが、上流の五木宮園や、川辺川ダムと柳瀬観測所の間の四浦観測所の実績値がないため、川辺川ダム地点での時間経過の流量の7:30AMのピーク流量である2,833ms/3というのが信頼できる流量といえるのか疑問です。

図7.川辺川の時間別流量と、川辺川ダムがあった場合の推定流量

球磨川は、市房ダムから川辺川合流前の約19㎞下流の一武観測所までで約600m3から、約2,700m3/sまで約2,100m3/s増水しました。川辺川は、川辺川ダム地点で、2,833m3/sの流量が、同じく約19km下流の柳瀬観測所では、3,403m3/sにまで、ピークの流量で570m3/sしか増水していないのは本当でしょうか?

確かに、ダムから観測所まで約19㎞ではありますが、球磨川は盆地を東西に流れており、河川の流入が多いため約2,100m3/s、川辺川には、山口谷川と六藤谷川など、細い河川しかつながっていないので、わかる気もします。令和2年7月球磨川豪雨検証委員会で、貯留関数法という手法で推定しているように説明されていますが、実績がある観測所はすべて公開して、川辺川ダムから柳瀬までピークでの増水分が570m3/sの根拠をわかりやすくしてもらいたいとと思いました。どんな計算よりも実績流量を示す方が説得力があります。

貯留関数法は詳しく理解したわけではありませんが、流れ込む河川流域面積を出して、その面積が大きいほど、合流する水量も多いという計算になるようです。

表2.球磨川と川辺川の流域面積と流量(黒字は実績、赤字は推定)

ダム上流
流域面積
ダムダム下流
流域面積
観測所
流量
球磨川上流域
湧山川等流域
157.8m2
市房ダム
1,154m3/s
→602m3/s
(7/4 7:00AM頃実績)
小山内川流域
都川等流域
仁原川等流域
小椎、牛操川等流域
多良木内水流域
柳橋川流域
阿蘇川流域
川瀬内水域
井口川水域
久鹿内水域
免田川流域
田頭、銅山川等流域
木上内水域
水無川流域
野間川等流域
一武内水域
328m2

一武観測所
3,000m3/s
(7/4 10:00AM頃実績)
川辺川上流域
久連子等流域
栗鶴川残流域
竹の川等流域
小川流域
椎葉谷川等流域
470km2
川辺川ダム
(存在したとして)
2,933m3/s
→852m3/s
(7/4  7:30AM頃推定)
山口谷川等流域
六藤谷川流域
63km2
柳瀬観測所
3,404m3/s
→1,129m3/s以下に減少
(7/4 9:00AM頃実績と

ダムが存在していた場合の推定)

令和2年7月球磨川豪雨検証委員会の10/20付けの参考資料「流量の推定について」のP37の流域面積と、川辺川ダムが存在した場合の効果の推定についてという資料のP3の流量を整理します。

市房ダムは、ダムの下流の流域面積が大きいので、市房ダムで500m3/sほどピークカットした流量602m3/sは、一武では、3,000m3/sまで増水、逆に川辺川ダム予定地は、上流の流域面積が大きく、下流の流域面積が少なく、市房ダムの10倍の容量の川辺川ダム予定地では2,933m3/sの流量を約2,100m3/sほどピークカットして852m3/sとして、柳瀬観測所でも、増水は+577m3/s程度で、1,129m3/s程度に抑えられるという推定になっています。

なお川辺川ダムが存在したとして、川辺川ダム貯水量は、図7のように、流出を852m3/s一定に調節したとして、ざっくりと図8の近似で計算すると、2100m3/s x 8時間 x 3600秒/時間が、60,480千m3で、梅雨期(第一期)の洪水調整容量の設計値84,000千m3以下となっているため、オペレーションは可能であったと思われます。したがって川辺川ダム容量の設計値は、7月4日豪雨では耐えることが出来る容量でした。なお、球磨川豪雨検証委員会の8月25日の議事録のP20には、川辺川ダムが存在したと仮定すれば、63,000千m3貯めたとの報告がされておりました。

図8. 川辺川ダムが存在したと仮定した場合の貯留量約60,480千m3/s < 84,000m3/s 梅雨期の調整容量

川辺川ダムの下流で852m3/sにした流量が、柳瀬で1,129m3/sと、約19㎞下流分の増水が、277m3/s程度に抑えられているという推定になっています。図7の柳瀬の推定だと、ピーク7:30AMで3,403m3/s → 1,129m3/sで、2,274m3/sの効果を柳瀬観測所で効果と推定しています。

表2.2007年の川辺川ダム球磨川水系河川整備基本方針と7月4日の令和2年7月球磨川豪雨検証委員会の7:30AMの推定流量

川辺川ダム上流流量
(存在した場合)
川辺川ダム下流流量
(存在した場合)
柳瀬観測所
2007年球磨川水系河川整備基本方針、基本高水流量▲2,500m3/s1,500m3/s
7月4日7:30AM
検証委員会推定流量
2,933m3/s852m3/s(▲2,081m3/s)1,129m3/s

令和2年7月球磨川豪雨検証委員会の10/20付けの参考資料「流量の推定について」のP41と、川辺川ダムが存在した場合の効果の推定についてという資料のP4の流量が、以下となります。球磨川は観測所の実績から出しているため、納得できる数字に見えますが、川辺川ダムは観測所の実測値がありません。球磨川人吉観測所の流量を、7,400m3/sから4,800m3/sまで35%削減したという推定が、この川辺川ダムの効果を過大にみているという、主に川辺川ダムに反対の立場の人からあがっています。

図9. 球磨川豪雨検証委員会の10/20付け資料「流量の推定について」P41、球磨川観測点の氾濫戻し流量
図10.球磨川豪雨検証委員会の10/20付けの参考資料「川辺川ダムが存在した場合の効果の推定について」P4、川辺川ダムが存在していた場合の球磨川観測点の流量の推定

もし、図10の川辺川ダムの効果が本当ならば、図4の人吉観測所の氾濫直前の7:30AMの最後の実績値の5,200m3/sを下回る4,800m3/sですから、下流の小川合流の千寿園の被害は5:30AMの時点で氾濫が始まっており、千寿園の被害はふせげなかったと思われますが、人吉市の2か所の堤防決壊や、人吉市全域に広がった洪水は防げた可能性があります。

図11.人吉市街の青い阿蘇神社付近(図1の地図に示した)の断面図、町全体が川になっているという状況(令和2年7月球磨川豪雨検証委員会の8/25説明資料3/4のP68

球磨川豪雨検証委員会には、今後、川辺川ダムの五木宮園、四浦、県川辺などの流量の実績を出すことで、本当に川辺川ダムが存在した場合の流量をダムで852m3/sまで下げて、その下流19km先の柳瀬までの増水は少なく1,129m3/sの流量に抑えられたという検証結果の裏付けをしてもらいたいと思います。

ダムによらない治水の効果について

ダムのよらない治水について整理します。2009年度から2019年度以降、堤防の強化や河道堀削などを実施しています。しかしこれらの工事で、2007年度の球磨川水系河川整備基本方針、7,000m3/sで洪水調整施設(市房ダムと川辺川ダム)で3,000m3/s削減して、人吉観測所で4,000m3/sとする高水流量を実現できるわけではありません。

図12.ダムによらない治水による実施工事(2009年度~2019年度)令和2年7月球磨川豪雨検証委員会の8/25説明資料4/4のP68

抜本的な対策として、令和2年7月球磨川豪雨検証委員会の10/20付けの「ダムによらない治水を検討する場」で積み上げた治水対策、「球磨川治水対策協議会」での治水対策の効果の推定について、として各検討案の流量削減効果をあげています。

人吉観測所における削減効果量が各対策で示されているので、表にして整理します。詳細は割愛します。現実的なものと、現実的でないものがそれぞれ含まれていますが、工期が長すぎて現実的でないものは効果が大きいように思えます。

表3.ダムによらない治水を県とする場で積み上げた治水対策①~⑩案の効果

球磨川人吉観測点削減効果(m3/s)
①引堤▲300m3/s
②河道堀削+川辺川合流部引堤▲300m3/s
③河道堀削+川辺川合流部堤防嵩上げ▲300m3/s
④堤防嵩上げ(川辺川合流部)▲300m3/s
⑤遊水地(多良木町から川辺川合流の人吉地区まで右岸、左岸)▲1,900m3/s
⑥遊水池(多良木町から川辺川合流の人吉地区まで右岸、左岸+堤防嵩上げ)▲1,900m3/s
⑦市房ダム再開発+河道堀削▲800m3/s
⑧市房ダム再開発+川辺川合流部堤防嵩上げ▲800m3/s
⑨放水路ルート1(川辺川上流から球磨川下流へ)▲1,800m3/s
⑩放水路ルート4(川辺川上流から八代海へ)▲2,900m3/s

今回の水害を考えると、上記で考えると⑤⑥遊水地か、⑨⑩放水路くらいしか効果はないに等しいですが、2019年11月13日の第四回資料、球磨川治水対策協議会の説明資料「4.複数の治水対策の組み合わせ案の課題整理の軸ごとの評価(案)」によれば⑤が工期100年、⑥が工期110年、⑨約35年後、⑩約35年後となっています。

費用については球磨川豪雨検証委員会の資料には記載がなく過去の資料からも正確なものは見つかりませんでした。工期が長いのですごい費用になることは間違いないでしょう。

球磨川の治水をどうすすめるべきか?

前回のブログでは、以下のように自分の意見を書きました。自分の案は、ダムによらない治水の案⑤や⑥に近い考え方です。

河道掘削、堤防、ダム、どんなに人の手による対策を行っても、近年の異常気象は設計を超えたレベル・頻度で災害に至るということです。これまで、70年、80年に一度と考えていた水害も、近年では10年、5年に一度の水害になって来ているということです。
実施できる水害対策は行いつつも、2050年までに日本の人口が9700万人にまで減少すると言われているこの時期をチャンスとして、水害のリスクのある河川流域の浸水想定区域の住民には少しずつ移転を促して行き、通常は(保障が限定される特別な)農地や公園として利用可能な調整池にしていくのが良いと考えます。

しかし、工期100年はあり得ません。様々な努力で、1/4に圧縮しても25年。それでも長いです。氾濫想定区域には、世代交代のタイミングで転出しやすくなるような補助金をつけるような条例で、長い時間をかけて、移転に協力してもらって遊水地をつくっていく方法が良いと思いますが、時間がかかります。近い将来に同じような規模の豪雨で氾濫がきたら、どうするのか?という問いには応えられません。

被害にあった方の熊本県民の声は、すぐに対策してほしいという要望は高まり、蒲島知事、関係する市町村長も川辺川ダム建設に傾いてきている現実を考えると、川辺川ダムの検討は避けられません。

こちらの国交省九州地方整備局の2008年8月の資料によれば、貯留型ダムで総事業費約3,400億円で、残事業費1,300億円、流水型ダムで総事業費3,300億円で、残事業費1,200億円とされています。

川辺川ダムの現状について、球磨川豪雨検証委員会の8月25日の第一回議事録の記述を見ます。P15に洪水調整容量のうち133,000千m3の総貯水量のうち梅雨期の洪水調整容量が84,000千m3という説明は、表1のとおりですが、利水利用のかんがい用水としての利用は2007年1月、水力発電は2007年6月に撤退を表明とあります。つまり利水のために常時を水をためておく貯留型である必要はなく、流水型のダムとすることが出来るということを意味しています。

流水型ダムは、常時開で災害時のみ、水をとめる或いは、設定値の流量を放出するという治水に特化したダムです。貯留型ダムが土砂がダムの湖底とその上流の河川にたまるので、定期的に土砂を除去しないといけないというデメリットがありますが、流水型であれば土砂の撤去も考えなくてよいはずです。利水分を削減して総容量も小さくすることも可能かもしれません。漁業関係者への影響がどの程度あるのかはわかりませんが、自然環境への影響は貯留型より大きく削減できるはずです。

図13.川辺川ダム流水型ダムの説明 球磨川水系の河川整備について(2008年8月25日 国土交通省 九州地方整備局)資料P17

とはいえ、ダムを反対してきた人々の長い運動で勝ち取った「2008年のダムによらない治水」は、熊本県の民意が反映された蒲島知事による決定でした。球磨川流域の水害は、大きいものだけでも昭和40年7月洪水、昭和47年7月洪水、昭和57年7月洪水、平成7年7月洪水、平成17年9月洪水及び平成18年7月と6回もあり、これらを踏まえての「ダムによらない治水」への決定だったわけですから、東京に住む私には考えられない根深い理由があるはずです。

蒲島知事は、今年度中に方向性を出すとして積極的な意見徴収を行っております。また球磨川豪雨検証委員会でも県知事と市町村長での議論は深まっていますが、首長のヒアリングや会議で方向を決めて、議会で議決するような進め方では、遺恨を残す結果になるでしょう。

住民に納得してもらえる議論をすすめるためには、住民参加型の協議会のようなものをつくるべきです。流域住民の中で、ダムに反対する団体、ダムに賛成の団体の人は公募の上、同じ人数を入れた上で、流域住民無作為抽出の住民にも参加してもらい、球磨川の治水の在り方の検討を始めるべきです。ダムによらない治水10案と、川辺川ダム1案について、どの案に誘導することもなく、メリット・デメリットをすべて洗い出して、住民の意見が出せるような議論の場を、設けるべきです。

結論ありきの日本式の住民参加ではなく、本当の住民参加型で行い、進行役はファシリテータを行政関係者ではなく外部の民間人に依頼して実施すると良いでしょう。10回程度と回数を決めて、最後に有力な対策案について投票してもらうか、投票できない人には治水の代替案を出してもらう、または行政がやるべきことを提案してもらうなどの方法をとって、方向性を示してもらうのです。同じテーマで同じ資料で、メンバーを変えて3回くらいやってもよいかもしれません。

そのような住民参加型の協議会のようなものを行った結果も参考にして、様々なヒアリングをした結果をもとに、熊本県知事が市町村長の協議を得て、議会で結論が出せるなら出せばよいでしょう。しかしそれでも民意が図れきれず、結論が出せないなら、治水案を1案にしぼった上で、熊本県全体か、あるいは、関係する流域の市町村での是非を問う住民投票を実施して賛否を決めるが良いと思います。

令和2年7月熊本豪雨災害から球磨川の治水について、今後の日本の民主主義の在り方を示すような検討をして結論を出していただき、熊本県民が納得頂ける結論に至ることを願っています。

まとめ

  • 2020年7月4日の午前中の球磨川の流量は、市房ダムから約600m3/s(市房)→約1,200m3/s(多良木)→約2,700m3/s(一武)→約5,200m3/s(人吉)→約7,500m3/s(渡)と市房から約35㎞ほど下流の渡観測所までの流量が測定されており、約19㎞で、600m3/sが7,500m3/sまで増えていることがあきらかになっています。
  • 川辺川は、球磨川との合流点の柳瀬観測所での水量が、3,404m3/sという記録が残っていますが、柳瀬観測所以外の五木宮園、四浦、県川辺観測所の流量記録が公開されていません。川辺川ダム予定地にダムが存在していた場合2,933m3/sの流量をピークカット後に852m3/sとして、球磨川合流の柳瀬観測所では、1,129m3/sという推定をしていますが、約19㎞先の柳瀬での増水分が加味された結果なのかがわからず、信ぴょう性が高いとは言えません。球磨川豪雨検証委員会には、五木宮園、四浦、県川辺観測所の流量記録を公開していただきたいと思います。
  • 2009年からダムによる治水について議論が始まり、堤防の強化や河道堀削など実施してきましたが、2007年の球磨川水系河川整備基本方針に対応できる整備ではなく、対策は2019年に10案公開されましたが、方向性がきまっていない中での球磨川豪雨が起こりました。
  • 今後の球磨川の治水を考えるうえで、川辺川ダムを選択肢に含めないことはできない状況になっています。川辺川ダムはかんがい用水、発電は断念しており、環境への影響が少ない流水型にすることも考えられます。
  • 球磨川の治水は、昭和40年以降で、大規模な洪水が6回も起こってきた中で、「ダムによらない治水」を蒲島知事が川辺川ダム凍結を決めたことです。今後の球磨川の治水は住民参加型で検討をすすめて、知事、市町村長、議会が判断する材料にするのが良いと思います。

以上

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    1. kamihoo2011 より:

      国土交通省の八代河川国道事務所に、川辺川ダムの2020年7月4日の柳瀬観測所以外の五木宮園、四浦、県川辺観測所の流量記録を公開してくださいと頼んだところ、河川環境課の方からご連絡をいただき、県川辺は熊本県が管理しているから熊本県に問い合わせしてほしい、五木宮園、四浦については、1年後に、 水文水質データベースで公開すると。

      2020年11月現在、球磨川の治水について方針が決まろうとしているタイミングで、川辺川ダムの治水の検証をしたいのですが。情報公開請求すれば出てくると思いますが、そこまでは労力をさきたくないし。
      どうしたものか。

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