日本で行われた住民投票のうち、市町村合併以外の住民投票のうち、以下のものを追いかけています(2020年8月まで)。
2013年6月に実施された都市計画道路3・2・8号線についての住民投票について
小平市長 小林正則氏の著作「住民投票」を読む
2016年以降に実施された住民投票の課題と解決について
2019年12月に実施された御前崎市における産業廃棄物処理施設の設置の住民投票について
2020年8月に実施された鹿児島県垂水市の庁舎移転の住民投票と、2020年8月市議会で否決された静岡県の庁舎移転の住民投票について
- 直接請求を使っての住民投票。地方自治法の74条による「有権者が、その総数の1/50以上の者の連署(署名)をもつて、市長村長に対し、条例の制定又は改廃の請求をすることができる権利」。分類は「直接請求(個別)」または、「直接請求(常設)」としています。 議会での過半数以上の賛成が得られないと実施できません。諮問型といって法的拘束力はないとされています。
- 地方自治体の首長による条例の制定による住民投票。分類は「市長提案」、「村長提案」としています。法的拘束力はないですが、首長が実施するもので結果はより尊重される可能性が高いです。
- 地方自治体の議員の1/12以上の提案による 住民投票。 分類は「議員提案」としています。諮問型といって法的拘束力はないとされています。
- 各自治体の条例によって定められた住民投票条例に基づいて実施される住民投票。分類は「常設」としています。各自治体によって必要な有権者の署名数は、1/3~1/12まで様々である。議会の過半数の賛成をなくしても実施可能な条例が多いです。投票率の成立条件がつくものが多く制度として定着してしまっていますが、住民投票の結果が望ましくないと予想する側がボイコットを誘発して不成立になるという課題があります。 諮問型といって法的拘束力はないとされています。
- 「大都市地域における特別区の設置に関する法律」によるもの。法的拘束力があります。大阪市で2015年に実施した1件のみ。
- 主に合併特例法に規定されている住民投票を使った市町村合併に関しての住民投票の事例については100件前後あり追いきれないことから表からは除外しています。
- 下表は日本で実施されたすべての住民投票が掲載されているとは限りません。もし抜けている事例があればご連絡ください。
日本で実施された市町村合併以外の住民投票
(「その後のゆくえ」の背景ブルー:住民投票の結果が反映、背景黒:住民投票結果が無視、グレーどちらとも言えない、背景白:成立要件によって開票されず不成立)
No |
投票日 |
自治体 |
件名 |
分類 |
当日有権者数 |
投票率 |
投票結果 |
その後の行方 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 |
1996年 8月 |
新潟県 巻町 |
原子力発電所の建設の賛否 | 直接請求→町長提案(個別型) | 23,222 | 88.3% |
賛成:7,904人 (38.6%) (60.9%) |
原発建設中止
|
2 |
1996年 9月 |
沖縄県 | 日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関しての賛否 |
直接請求(個別型) |
959,832 | 59.5% | 賛成:91.3% 反対:8.7% |
地位協定は見直しされていない。米軍基地はSACO合意によって縮小の方向 |
3 |
1997年 6月 |
岐阜県 御嵩町 |
産業廃棄物処理施設の設置の賛否 | 直接請求(個別型) | 14,877 | 87.5% |
賛成:10373人 18.8% 79.7% |
白紙撤回 |
4 |
1997年 11月 |
宮崎県 小林市 |
産業廃棄物中間処理場の建設の賛否 | 直接請求(個別型) | 31,530 | 75.9% | 賛成:40.2% 反対:58.7% |
建設し稼働中 |
5 |
1997年 12月 |
沖縄県名護市 |
名護市における米軍のヘリポート基地建設の是非 |
直接請求(個別型) | 38,140 | 82.5% | 賛成:8.1% ( 条件付き賛成:37.2%) 反対:51.6% (条件付反対:1.22%) |
市長が投票直後受け入れ辞職。2019年現在も辺野古移設工事進展中紛糾 |
6 |
1998年 2月 |
岡山県 |
産業廃棄物最終処分場の設置の賛否 | 直接請求(個別型) | 4,203 | 91.7% | 賛成: 1.8% 反対: 98.0% |
白紙撤回 |
7 |
1998年 6月 |
宮城県 白石市 |
産業廃棄物処分場の設置の賛否 |
市長提案(個別型) |
32,121 | 71.0% | 賛成: 3.8% 反対: 94.4% |
中止 |
8 |
1998年 8月 |
千葉県 海上町 |
産業廃棄物処分場の設置の賛否 | 町長(個別型) | 不明 | 87.3% | 賛成: 1.7% 反対: 97.6% |
県知事は設置許 可。県の許可を裁判で取り消し |
9 |
1999年 11月 |
長崎県 小長井町 |
採石場の新規計画と拡張計画の賛否 | 町長(個別型) | 不明 | 67.8% |
新規計画:賛成50.4% 反対45.0% 反対43.3% |
新設、拡張共に実施 |
10 |
2000年 1月 |
徳島県 徳島市 |
吉野川可動堰建設計画の賛否 | 直接請求 否決後 →議員提案(個別型) |
約207,200 |
55.0% (1/2成立要件以上の投票率) |
賛成 9,367人 8.4% 反対 102,759人 91.6% |
計画白紙 |
11 |
2001年 5月 |
新潟県 苅場村 |
原発プルサーマル計画導入の賛否 | 直接請求(個別型) | 4,092 | 88.1% |
賛成 1,533人 42.7% 反対 1,925人 53.6% 保留 131人 3.7%
|
計画延期 |
12 |
2001年 11月 |
三重県 海山町 |
(誘致派町長による)原子力発電所の誘致の賛否 |
町長(個別型) |
不明 | 88.68% |
賛成 2,512人 32.4% 反対 5,215人 67.26% |
誘致断念 |
13 |
2003年 10月 |
高知県 日高村 |
産業廃棄物処理施設の設置の賛否 | 直接請求(個別型) | 5,158 | 79.8% |
賛成 2,466人 60.0% 39.4% |
建設 |
14 |
2005年 10月 |
千葉県 袖ケ浦市 |
袖ヶ浦駅北側 土地区画整理事業の賛否 |
直接請求(個別型) | 47,436 | 57.96% |
賛成 5,369人 23.5% 反対 17,456人 76.5% |
凍結 |
15 |
2006年 3月 |
山口県 岩国市 |
米空母艦載機移駐案受け入れの賛否 |
市長提案(常設型) |
84,659 |
58.68%(1/2成立要件以上の投票率) |
賛成 5,369人 11% 反対 43,433人 89% |
中止 |
16 |
2007年 12月 |
千葉県 四街道市 |
四街道市における地域交流センターの建設の賛否 | 直接請求(個別型) | 70,596 | 47.55% |
賛成 7,962人 23.9% 反対 25,384人 76.1% |
中止 |
17 |
2008年 4月 |
沖縄県 伊是名村 |
牧場誘致による牛 舎建設の賛否 |
村長提案(個別型) | 1,327 | 71.36% |
賛成 481人 50.05% 49.95% |
計画白紙 |
18 |
2010年 11月 |
長野県 佐久市 |
佐久市総合文化会館の建設の賛否 | 市長提案(個別型) | 80,015 | 54.87% |
賛成 12,638人 28.93% 反対 31,051人 71.07% |
建設中止 |
19 |
2012年 5月 |
鳥取県 鳥取市 |
市庁舎の移転新築か耐震改修かを問う |
直接請求 否決後 に議員提案(個別型) |
155,419 | 50.81% |
耐震改修47,292人 60.6% 39.4% |
移転新築で進められる (その後移転新築を掲げた市長が当選 |
20 |
2013年 4月 |
山口県 山陽小野田市 |
市議会議員定数削減の是非 | 直接請求(常設型) | 52,479 | 45.53%(1/2成立要件満たさず非開票) | 投票総数 23,892人 不成立、非開票 |
– 議員定数削減しない |
21 |
2013年 5月 |
東京都 小平市 |
都道建設計画住民参加による見直しの是非 | 直接請求(個別型) | 145,024 | 35.17%(1/2成立要件満たさず非開票) | 投票総数 51,010人 不成立、非開票 |
– 都道建設中 |
22 |
2013年 11月 |
熊本県 和水町 |
学校建設費増の是非 | 村長提案(個別型) | 9,403 | 28.93%(1/2成立要件満たさず非開票) | 投票者数 2,720人 不成立、非開票 |
– 再度住民投票へ |
23 |
2013年 12月 |
埼玉県 北本市 |
市費を使っての高崎線「北本新駅」建設の是非 | 市長提案(個別型) | 56,656 | 62.34% | 賛成 8,353人 23.8% 不賛成 26,804人 76.2% |
計画白紙 |
24 |
2014年 8月 |
三重県 伊賀市 |
伊賀市庁舎整備に関する住民投票について(移転の是非) ・三重県伊賀庁舎隣接地(四十九町)に賛成 ・現庁舎地(上野丸之内)に賛成 |
直接請求否決→市長提案(個別型)※1/2投票率の成立要件は自治基本条例に記載のため | 76,000 | 42.51%(1/2成立要件満たさず非開票) | 投票者数 32,304人 不成立、非開票 |
2019年1月に四十九町に市庁舎は移転 |
25 |
2015年 2月 |
埼玉県 所沢市 |
小中学校の除湿(冷房)工事についての賛否について | 直接請求(個別型) | 278,248 | 31.54%(賛否いずれか過半数の結果が投票資格者総数の1/3で重みを斟酌) |
賛成56,921 (65.4%) (34.5%) |
2校にエアコン設置発表、その後、全市小中学校へのエアコン設置計画策定 |
26 |
2015年 2月 |
沖縄県 与那国町 |
陸上自衛隊の部隊配備について賛否 | 議員提案(個別型) | 1,276 | 85.74% |
賛成632票 (58.7%) (41.3%) |
計画通り配備 |
27 |
2015年 4月 |
滋賀県 高島市 |
高島市庁舎整備に関する住民投票 「現 新旭庁舎の改修および増築」に賛成 「今津町今津への新築移転」に賛成を問う |
市長提案(個別型) | 42,067 |
67.85% (県議会選挙と同時実施) |
改修・増築18,565票(68.1%) (31.9%) |
2019年3月増築・改修で整備完了 |
28 |
2015年 4月 |
長崎県 壱岐市 |
新市庁舎建設に関する是非 | 議員提案(個別型) | 22,809 | 63.67% |
賛成:4629票 (32.3%) (67.7%) |
新庁舎は断念。現市役所庁舎耐震改修計画 |
29 |
2015年 5月 |
大阪市 |
大阪市における特別区の設置について賛否 |
市長提案「大都市地域における特別区の設置に関する法律」による | 2,104,076 | 66.83% |
賛成:694,844 (49.6%) (50.4%) |
中止
|
30 |
2015年 5月 |
愛知県 新城市 |
新庁舎建設計画の見直し ①現庁舎規模案(市の計画) 新しい市道をつくり、現在の東庁舎を取り壊して新庁舎1棟集約する(市の計画) ②縮小案 新しい市道をつくらず、東庁舎を利用して新庁舎の規模を縮小する |
直接請求否決→市長提案 (個別型) |
40,819 | 56.23% |
現庁舎規模案 9,759 (43.1%) (56.9%) |
・現道のままの道路形状・東庁舎を活用し、新庁舎の規模縮小をはかり 建設。2018年3月完成 |
31 |
2015年 8月 |
茨城県 つくば市 |
総額305億円をかけて建設予定の総合運動公園計画への賛否 | 直接請求→議員提案(個別型) | 167,589 | 47.30% |
賛成15,101票 (19.2%) (80.8%) |
計画の白紙 |
32 |
2015年 10月 |
愛知県 小牧市 |
新図書館(ツタヤ図書館)建設計画に関する住民投票条例 | 直接請求→議員提案(個別型) | 116,624 |
50.38% |
賛成24,981票 (43.5%) (56.4%) |
白紙再検討 |
33 |
2015年 11月 |
大阪府 和泉市 |
和泉市庁舎整備(現庁舎立替・移転)に関して |
議員提案(個別型) | 144,580 |
48.82% |
現庁舎建替 33,213 (47.8%) (52.2%) 移転の場合投票者の2/3以上を目安とするとしていた |
2/3を超えず、現状での建て替え進めている |
34 |
2015年 11月 |
沖縄県 竹富町 |
竹富町役場の位置についての意思を問う(現庁舎石垣立替、西表島移転) |
議員提案(個別型) | 3,296 | 80.25% |
石垣市内1,140 (43.9%) 1,459 (56.1%) |
西表島に移転 |
35 |
2016年 2月 |
沖縄県 石垣市 |
石垣市役所の建て替えに伴う新庁舎の建設位置、現地建替か、旧石垣空港跡地 |
議員提案(個別型) |
37,648 | 39.05% |
現地 2,655 (18.2%) (81.8%) |
旧石垣空港跡地に移転 |
36 |
2016年 3月 |
山梨県南 アルプス市 |
南アルプス市庁舎整備について、新築移転か、現庁舎の用地買収による増築計画 | 直接請求(個別型) | 57,237 | 49.92% |
新築移転12,299 (43.9%) (56.1%) |
増築 |
37 |
2016年 10月 |
熊本県 和水町 |
菊水区域小・中学校校舎建設事業に関して、既存校舎改修か、新築か |
町議提案(個別型) | 9,203 | 57.79% |
既存校舎改修:2,905 新築 :2,322 |
改修 |
38 |
2016年 11月 |
愛知県 高浜市 |
中央公民館取り壊しの賛否を問うための住民投票を実施 | 直接請求(常設型) | 35,556 | 36.60% |
投票総数 :13,034(36.6%) 投票資格者の2分の1以上の成立要件を満たせず無効、未開票 |
市は公民館を解体、民間病院の分院建設 |
39 |
2017年 2月 |
石川県 輪島市 |
大釜における産業廃棄物最終処分場建設の賛否を問う住民投票 | 直接請求(常設型) | 24,602 | 42.00% |
投票総数 : 10,338(42%) 投票資格者の2分の1以上の成立要件を満たせず無効、未開票 |
輪島市長が産業廃棄物の受け入れを表明、建設へ |
40 |
2017年 10月 |
茨城県 神栖市 |
「(仮称)防災アリーナ整備事業」に係る規模の見直し賛否を問う住民投票条例 | 直接請求(個別型) | 76,126 | 33.40% |
賛成:13,812票 (54.6%) (45.3%) |
見直しした場合は、多額の損失が生じる。規模は見直されず総事業費約171億円で2019年3月完成 |
41 |
2017年 11月 |
滋賀県 野州市 |
野州駅南口私有地に市民病院を整備することについて、駅前整備か、私立野州病院を改修するか | 議員提案(常設型) | 41,361 | 44.91% |
投票総数 :18,576(44.9%) 投票資格者の2分の1以上の成立要件を満たせず無効、未開票 |
現市立野州病院の施設を改修して使用すべきなどの意見があり、審議継続 |
42 |
2018年 11月 |
篠山市 | 市名を篠山市から、丹波篠山市へ変更することの賛否を問う住民投票 | 直接請求(常設型) | 35,005 |
69.80% 市長選と同時実施(1/2以上の投票率の成立要件を上回る) |
改名に賛成 :13,646 (56.4%) 改名に反対 :10,518 (43.6%) |
市の名称は丹波篠山市に変更 |
43 |
2018年 12月 |
宇陀市 | 宇陀市保養センター美榛苑の老朽化に伴う宿泊事業者誘致事業・公園整備事業について市民の賛否を問う住民投票 | 議員提案(個別型) | 26,673 |
51.32% (1/2以上の成立要件を上回る投票率) |
賛成:6,574 (49.1%) (50.9%) |
宿泊施設誘致は断念して、公園は縮小して整備する。 |
44 |
2019年 2月 |
沖縄県 | 辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票 | 直接請求(個別型) | 1,153,600 | 52.48% |
賛成:114,933 (19.1%) (72.2%) (8.7%) |
辺野古への埋め立てを進める。 |
45 |
2019年 4月 |
静岡県 浜松市 |
区の再編に関する住民投票 設問1)3区案(天竜区、浜北区、その他の5区)で再編を2021年1月1日までに行うことについて 設問2)<設問1で反対の人のみ回答する>区の再編を、2021年1月1日までに行うことについて |
議員提案(個別) | 647,801 |
55.61% (1/2以上の投票率の成立要件を上回る) |
設問1 (40.9%) (59.0%) 設問2(設問1の反対の有権者のみ回答) 賛成:31,722 (16.7%) 反対158,629 (83.3%) |
引き続き浜松市行財政改革・大都市制度調査特別委員会で議論が続いている |
46 |
2019年12月 |
静岡県御前崎市 |
御前崎市における産業廃棄物処理施設の設置についての賛否 | 直接請求(個別型) | 26,450 |
60.81% |
賛成:1,565 (9.8%) (90.2%) |
市長は知事及び事業者に中止要請 |
47 |
2020年8月9日 |
鹿児島県垂水市 |
垂水市庁舎建設に関する住民投票 | 直接請求否決→市長提案 | 12,456 |
68.83% |
賛成:4,080(47.9%)、 反対:4,424(52.0%) |
庁舎移転新築計画は白紙 |
参考資料:
自治体の政策過程における住民投票 岡本公彦
総務省 地方自治月報 第58号(7)条例による住民投票に関する調 (平成26年4月1日 から 平成28年3月31日 まで)
地方公共団体における住民投票制度に関する一考察 勝浦信幸・石津賢治