ランニング

ハーフ/フルマラソンの持久係数とペース配分について

投稿日:2019年5月6日 更新日:

※)2019年度の自分のレース結果を追加しました。(2/9)

フルマラソンにおける30㎞以降のきつさ

ハーフマラソンでのラスト5㎞、フルマラソンのラスト5㎞のきつさは全くレベルが違います。フルの35㎞以降の苦しさは、経験したランナーにしかわかりません。多くの市民ランナーはこんなはずではなかったと、35-40kmのラップが2-3分、或いは5分以上遅くなるというような経験をされたことがあるでしょう。この失速は走力も、レース経験も豊富で十分なトレーニングを積んだプロランナーでも起こることです。プロでも35㎞以降失速する例は良く見かけます。

失速の原因は、当日の体調不良の場合が多いです。練習しすぎ、風邪、睡眠不足などが、体調不良の原因です。想定ペースが当日の体調では厳しい状況ではあっても、これまで苦しい練習をしてきたことから、「いけるところまで、、、」と考えてしまい、当初の設定していたラップタイムで行ってしまうと、30㎞以降で撃沈する可能性が高いです。しかし、それ以前に、設定ペースがそもそも速すぎることが原因で後半失速するランナーは多いです。以下、ハーフ・フル持久係数によるフルマラソンのペース設定について説明します。

フル/ハーフ持久係数とは

フル・ハーフ持久係数とは、自分がこれまで出場したフルマラソンのタイムを、その直前または直後のハーフマラソンのタイムで割ったものです。持久係数が低ければ低いほどスピードに対して持久力があり、持久係数が大きいほどスピードに対して持久力がないことを意味していますということを意味しています。ポイントは、フルマラソンの2週間から4週間前後で走ったハーフマラソンの記録を使う事が重要です。3か月前、半年前のハーフのレース結果ですと、既に走力が変わっている可能性があり注意が必要です。

シーズン ハーフマラソン大会名 日付 記録 フルマラソン大会名 日付 記録 失速 フル/ハーフ持久係数
2009年(秋) はだの水無川単座丹沢 12/6 1:29’30 つくば 11/22 3:09’22 なし 2.12
2010年(秋) 成田POP 11/7 1:24’11 大田原 11/23 3:00’05 33㎞以降 2.14
2014年(秋) 丹沢湖 11/30 1:32’54 さの 12/14 3:13’13 なし 2.08
2016年(秋) 戸田 11/20 1:24’58 さの 12/13 3:02’20 36km以降 2.15
2017年(秋) 成田POP 11/12 1:23’14 大田原 11/23 2:59’29 なし 2.16
2018年(春) 立川 3/4 1:24’48 佐倉朝日 3/25 3:04’09 36km以降 2.18
2019年(秋) 成田POP 11/10 1:23’41 大田原 11/23 2:56’44 なし 2.11

わたしのハーフ/フルマラソン持久係数

私の持久係数を、2009年、10年、14年、16年、17年、18年、19年と計算してみました。その他のシーズンもフルマラソンは出ていますが、ハーフに出ていなかったりで計算ができないため飛び飛びになっています。2.08~2.18の範囲に収まっています。2014年は、怪我で低迷していた時期で、ハーフ90分切りが出来なくなってショックを受けたのですが、なぜかフルマラソン(さのマラソン)で会心のペース配分が出来て、持久係数は2.08。以後、5年経過して、走力はアップしてますが、2.08は二度と再現しないためこの値は除外します。そうすると、2.12~2.18程度ということになります。記録が良かった場合と悪かった場合でこの持久係数は変わるのか?あるいは、後半失速した場合は影響するのか?確認するために、フルマラソンタイムと持久係数をグラフにしてみました。

フルマラソンタイムと持久係数の関係

2010年の大田原マラソン、2度目のサブスリーチャレンジのレース、前半下り基調でオーバーペース、33㎞以降失速、なんとか粘るも、惜しくも5秒足りずに失敗に終わります。 このとき直前のハーフ成田POPランに対しての持久係数が2.14。しばらく腸腰筋を怪我して体調もモチベーションもあがらず低迷、2016年から再びトレーニングをして臨んだ3度目のサブスリーチャレンジの2016年のさのマラソンは35㎞まではサブスリーぺースで、36㎞で大失速、3時間2分20秒に終わりサブスリー失敗でしたが、この時の持久係数が2.15。2017年は、4度目のサブスリーチャレンジ、2010年と同じレースの組み合わせで、成田POPランでは、1:23’14と2010年同レースから約1分自己ベストを更新、普通に走ればいけるだろうと自信をもって大田原マラソンに向かいました。この時の大田原はサブスリーペースの4’15/㎞を意識して4’10~4’15/kmでラップを刻み、最後まで失速することなく、サブスリー達成。この時の持久係数が2.16。自分の中では、2.15から2.17くらいが、持久係数として頭に入れてレースを組み立てるようにしています。2019年度は、持久係数が改善されて、2.11となっていますが、この理由は、フルマラソン、サブスリーから2時間55分切りまでで書きましたが、ピッチを増やしてストライドを小さくしたことでランニングエコノミーが改善したような感触をもっていることが関係しているかもしれません。

他の選手の持久係数

ここでトップアスリートの一人である川内優輝選手のハーフ・フル持久係数を見てみます。結論から言うと、2.03~2.06が川内選手の持久係数と言えます。

シーズン 大会名 日付 記録 大会名 日付 記録 失速 フル/ハーフ
持久係数
2015(秋) 二十間道路マラソン 9月6日 1:05:32 ケープタウンマラソン 9月20日 2:15:34   2.07
2015(秋) 上尾シティマラソン 11月15日 1:03:11 福岡国際マラソン 12月6日 2:12:48   2.11
2016(春) 焼津みなとマラソン 4月10日 1:03:47 チューリッヒマラソン 4月24日 2:12:04   2.08
2016(春) 函館マラソン 6月26日 1:04:24 ゴールドコーストマラソン 7月3日 2:09:01   2.01
2016(秋) ちばアクアラインマラソン 10月23日 1:06:26 ポルトガルマラソン 11月6日 2:14:32   2.03
2016(秋) 上尾シティマラソン 11月20日 1:34:26 福岡国際マラソン 12月4日 2:09:11   1.37
2017(春) 奥球磨ロードレース 1月15日 1:04:17 愛媛マラソン 2月12日 2:09:54   2.03
2017(春) 上里町乾武マラソン 3月26日 1:05:33 大邱国際マラソン 4月2日 2:13:04   2.04
2017(秋) 上尾シティマラソン 11月19日 1:03:35 福岡国際マラソン 12月3日 2:10:53   2.06
2017(秋) 小川和紙マラソン 12月10日 1:04:05 防府読売マラソン 12月13日 2:10:03   2.03
2018(春) 吉野川リバーサイドハーフ 3月8日 1:05:50 万金石マラソン(台湾) 3月18日 2:14:12   2.04
2018(秋) 上尾シティマラソン 11月18日 1:02:49 福岡国際マラソン 12月16日 2:12:03   2.11

川内優輝選手 フル/ハーフ持久係数

川内選手の2015年秋から、2018年秋まで、ハーフとフルの間隔が1か月以内で、
川内選手が真剣に走ったと思われる? 2:15分台までフルマラソンと直前のハーフ成績のレースを拾ってみました。福岡国際マラソンで2015年と2018年の2回ほど、2.11と比較的大きな値があります。調子が悪かった言ってしまえばそれまでですが、トップランナーも多く出る大会で、自分のペースで走りづらいことなども原因かもしれません。2016年は2:09:11という素晴らしい記録で全体3位、日本人トップの成績もあります。この時は直前の上尾シティハーフは体調不良だったようで、フルより遅いペースで走ったようで、持久係数は1.37と2以下になっています。他の国内レースは、2.03~2.06に収まっています。ハーフのレースの2倍に、わずか、1~3分程度加えた時間でフルマラソンを走ってしまうという驚異的な持久力であり、川内選手がフルマラソンに適性があるといえます。海外のレースでも台湾や韓国の比較的近いレースでは、2.04と川内選手の平均的な持久係数ですが、南アフリカやスイスの大会では、2.07や2.08と比較的持久係数が高くなっています。これは日本との時差と温度湿度など気象状況が異なることも影響していると思われます。逆に2016年7月のゴールドコーストマラソンでは、2.01という驚異的な持久係数が出ているが、これは暑い日本の函館マラソン(ハーフ)から、南半球の涼しいゴールドコースト(フル)の大会に臨んだため、快適に走れたのではないかと考えられます。いずれにしても、市民ランナーとは比較できない低い持久係数であることは間違いありません。

もう一人、知り合いの40代女性ランナーの持久係数を見てみました。

シーズン 大会名 日付 記録 大会名 日付 記録 失速 フル/ハーフ
持久係数
2018(春) ぎふ清流ハールマラソン 4月22日 1:35:20 長野マラソン 4月15日 3:25:59 なし 2.17
2018(秋) 一関国際ハーフマラソン 9月23日 1:36:27 みやぎ復興マラソン 10月14日 3:25:55 なし 2.14
2019(春) 新宿シティハーフマラソン 1月27日 1:33:19 愛媛マラソン 2月10日 3:19:35 なし 2.14
2019(春) ぎふ清流ハールマラソン 4月28日 1:34:50 長野マラソン 4月21日 3:22:32 なし 2.14

40代女性ランナーのフル/ハーフ持久係数

この女性ランナーは、最低月間300㎞以上練習して多い時は月間700㎞以上も練習されています。2019年1月から4月までで7回もフルマラソンに出場されているタフネスぶりで、ほとんどのフルマラソンで、3時間10分台から20分台前後で安定した結果を出しています。フルが多すぎてハーフが少ないので、比較するレースがあまりないのですが、ハーフの直後、或いは直前のフルで持久係数を見てみました。持久係数は2.17が1回で、残りは、2.14で揃っています。3人のランナーの持久係数を見ましたが、2-4週間直前または直後に行われるハーフマラソンとフルマラソンの記録には、一定の相関関係があり、ランナーにより固有のものであることがわかります。

フルマラソンのペース配分

では、フルマラソンのレース配分はどうすれば良いでしょうか?まずは、ターゲットとするフルマラソンの2週間から1か月前に、ハーフマラソンをエントリします。十分なトレーニングを行い、ハーフマラソンは全力で走ります。ハーフは練習と位置付けて手を抜いては行けません。ハーフマラソンのダメージは、フルマラソンほど大きくないので2-4週間後のフルマラソンに影響することはありません。自分の持久係数がわかっていれば、ハーフマラソンに、持久係数をかけてレースペースを計算します。

自分の2019年3月25日の佐倉朝日健康マラソンの例です。 持久係数は、最大値、最小値それぞれで計算します。直前の2019年3月4日の 立川シティハーフマラソンでは、調子を落としており1:24:48とベストより1分半程度遅かったです。そのタイムに、持久係数の最大値と最小値をかけたフルのレース予想タイムを、42.195㎞で割って、ラップタイムを決めます。

  • 1:24:48 x 2.15(最小値)= 3:02:19 => LAP 4’19/km
  • 1:24:48 x 2.17(最大値)= 3:04:01 => LAP 4’22/km 

実際のレースでは、4’19~4’22を意識して、走ればおそらく3:02台悪くても3:03台でゴール出来たのではないかと考えています。実際にはサブスリー実現直後の大会でもう一度サブスリーとサブスリーペースにこだわり4’10~4’15のペースで行ってしまったため、後半35㎞以降で大きく失速してしまい3:04:09と、実力を出し切れない結果に終わりました。この教訓から自分の場合は、フルで3:00:00切を狙える直前のハーフは、持久係数2.15で計算される1:23:43程度として認識しています。
ペース配分は、前半に貯金をつくる作戦の人が多いですが、後半の大失速の懸念があるため、決して貯金を多く作ろうとしてはいけません。目標タイムが3-4時間のランナー前半ハーフで1分貯金を作る程度、4-5時間のランナーは2分貯金を作る程度、つまり1㎞あたりで計算すると、3-4時間を狙うなら3秒程度(4-5時間なら6秒)ずつ貯金ということになります。ロードのレースでアップダウンや風の影響もあるため実際にはそんな厳密な管理は出来ませんので、 前半からセーブするということが簡単には出来ないのですが、 1㎞あたり設定より5秒速かったら意識して落とすべきです。

さて、持久係数を把握して、直前2-4週間前のハーフマラソンのタイムから、計算されるフルマラソンの設定タイムですが、適用できないランナーもいます。マラソンを始めてあまり経験が豊富ではなくで、直近のレースで自己ベストを20分も30分も更新している人は適用できません。逆に言うと、ベテランランナーで、自己ベストが伸び悩んでいる人ほど、持久係数による設定タイムは有効ということです。伸び悩んでいる人は、ハーフのタイムを速くすることでフルマラソンのタイムを伸ばせるということになります。伸びしろがたくさんあるランナーは、20㎞の練習でやや苦しくらいが最後まで走り切れるペースより、1㎞あたりで15秒-30秒くらい遅いペースで序盤を走り、ハーフまで、30㎞まで35㎞までと、走ってみて余裕を見て、ペース配分を変えていく(可能ならあげていく)ことで実力を発揮できるでしょう。ほかに持久係数があてにならないケースとしては、直前のハーフが暑すぎた、或いはアップダウンがあまりにも多くて、そのハーフマラソンの記録は参考にならないほど悪い記録だったなど、当日のフルマラソンと大きく条件が異なる場合です。その場合は、フルマラソンの前の10㎞、5㎞の大会のレースや記録会で、昨年の同時期の記録と比較して設定を決めるのが良いです。5㎞、10㎞の月例レースや記録会などに出て、記録を残しておくことがフルマラソンのレースペース設定の重要な情報になります。また練習内容が偏っているランナーで、持久係数が当てはまらないランナーもいます。スピード練習や、10㎞の練習を多く行い、長い距離走が20㎞までというランナーは、持久係数が悪くなり(大きくなり)フルマラソンで力を発揮できないというケースも見受けられます。フルマラソンに臨むにあたってはスピード練習は有効ですが、20㎞、30㎞以上など距離走も必要になります。

まとめ

・フル/ハーフマラソンによって計算される持久係数は各ランナーによって固有であり、ベテランランナーほど、直前のハーフマラソンのタイムに持久係数をかけたフルマラソンのタイムからレースペースを決めると結果が安定する。

以上(最終更新日:2020/2/10)

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    小平市在住の50代男性のkamihooです。40歳から本格的にフルマラソンの大会に参加し始めて、2017年11月に48歳で大田原マラソンでサブスリーを達成しました。自己ベストは2020年1月の勝田全国マラソンの2時間54分37秒です。「ジョグのねっとわーく」でランニング日記をkamihooのアカウントで公開しています。https://jogno.net/

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