ランニング

サブスリー達成のためのベンチマーク

投稿日:2020年4月27日 更新日:

市民ランナーの目標として、フルマラソンでのサブスリー達成と考えている人は少なくないと思います。楽に達成出来る目標ではありません。私の場合は二度目のフルマラソンの2009年のつくばマラソンで3時間9分台で走って、1年間トレーニングをつんで2010年の大田原マラソンは、満を持して臨んで3時間5秒で惜しくもサブスリーを逃しました。2011年の東京マラソンが当たっており、意気込んで練習しましたが、無謀な練習プランで、右腸腰筋を大怪我してしまい棄権、半年間療養、走力も落ちてやる気もなくなり大きく目標は遠のきました。

その後、2016年から再始動、サブスリーを達成したのは、五回目のチャレンジ2017年11月23日の大田原マラソンでした。3時間10分からの10分を短縮するために、8年の年月が経過していたのです。今振り返ると、やっぱり試行錯誤の過程で、なかなか気づかなかった事が多かったと思っています。初サブスリー後は、2回失敗した後に、2018年秋から2020年まで4回連続サブスリーを達成して、勝田では2:55切に成功しました。走力はもちろんですが、やっぱりノウハウがあると思います。

今回はこれからサブスリーを目指す人のために私のように8年もかからないで達成できるように、学んだことをまとめます。以下の流れで説明します。

サブスリー達成のためのベンチマーク

ベンチマークとは何のことを言っているかと言うとフルマラソンでサブスリーを達成するための、そのほかの距離のレースや練習メニューで走る事が出来るレベルのことを言っています。

表1.サブスリー達成のための自分のベンチマーク

  2010年度 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度
こだいら駅伝3.1㎞

11’18 2017/2/5

11’47 インフルエンザ明けで体調不良2018/2/4

11’11 2019/2/3

11’07 2020/2/2
5㎞ 2本(R=11分)@秋留台

18’53,18’50 2017/10/14

18’44,18’42 2018/10/13
10㎞T.T.@秋留台

39’12(但し12㎞レペの通過タイム) 2017/10/21

37’50

2019/1/19

38’05 2019/12/21
ハーフ 84’11@成田POPラン 2018/11/7

84’57@戸田彩湖ハーフ2016/11/20

83’11@成田POPラン 2017/11/7

83’39@成田POPラン 2019/11/10

31.4㎞ペース走(小金井公園6周)

2:07’26

(av4’14/km)30㎞、同コース5.8周)

きつい 2010/10/16

2:18’53

(av4’25/km)

余裕あり、6周目4’20まであげる2016/10/30

2:13’30

(av4’15/km) 33㎞の6周通過タイム余裕あり2017/11/5

2:14’12

(av4’16/km) きつい 2018/10/21

2:13’50

(av4’16/km)余裕あり、6周目ペースアップ 2019/11/3

フルマラソン

3:00’05@大田原マラソン 2010/11/23

3:02’20@さのマラソン2016/12/11 2:59’38@大田原マラソン 2017/11/23

3:00’19@ぐんまマラソン 2018/11/3

2:56’44@大田原マラソン 2019/11/23
    3:11’08@佐倉朝日健康マラソン2019/3/26 3:04’09@佐倉朝日健康マラソン 2018/3/25  2:57’47@さのマラソン 2018/12/9

2:54’37@勝田全国マラソン 2020/1/26

        2:56’19@館山若潮マラソン 2019/1/27  

フルマラソンは、1年間に何度も走れるものでもありません。距離が長いだけに失敗することも多いです。つまりフルマラソンでフルマラソンをベンチマークするのはふさわしくありません。本命レースは、年2-3回という人が多いかと思います。フルマラソンより短いランニング競技でベンチマークします。

5㎞レペ(レスト11分)x2本、このメニューは秋留台公園合同練習会の定番メニューの一つです。5㎞ 1本でベンチマークで問題ありませんが私の練習環境に合わせて2本になっています。それから、10kmタイムトライアル、レース直前のハーフマラソン、小金井公園の5.23㎞のコースの6周31.4㎞などをベンチマークとして使っています。さらに、2月のこだいら市民駅伝の3.1㎞も加えています。そのほか表1以外では、4’00/kmx10本(レスト200mジョグ、60秒)や、3’40/kmx8本(レスト200mジョグ、75~90秒)などもベンチマークに使っています。

ベンチマークをいくつも持つことによって、この距離をこれくらいで走れたから、サブスリー狙えるとか、2:57を切りとか、2:55を切りなど、自分の中で確信をもってペース設定が出来るようになります。自分の場合は、サブスリー達成のためには、11月涼しくなってからのハーフマラソン大会(主に成田POPランをベンチマークにしています)で、84分を切ることを条件としています。さらに10㎞では39分、5㎞2本では19分、4’00/kmの1㎞インターバルでは、レスト200m1分以内で10本が楽にこなせるなどを条件としています。

なお、31.4㎞ペース走は、サブスリーペースの4’15/kmで行きたいところなのですが、かなりの割合で失敗します。気温の影響や、当日のコンディションなどもあり、長い距離はごまかしがきかず、失敗することも多いです。30㎞のペース走は失敗のリスクもあるので、2回に1回成功すればよいくらいに考えておけば良いです。

長距離競技では、スピード型と持久力型、もしくは、その中間と様々なタイプのランナーがいます。私の場合は、フルマラソンのタイムでハーフマラソンのタイムで割る持久係数は、2.15-2.17倍くらいでした。この値が、小さく2に近いほど持久型。大きいほど、スピード型ということになります。2019年度のシーズンでは、ランニングエコノミーが改善されて、今のハーフ/フル持久係数は2.11になりました。びわ湖毎日マラソンの出場要件は、フル2:30または、ハーフ1:10としています。このタイムがだいたい走力として同じとみているようです。この二つの持久係数は2.14倍です。持久係数という面で見ると琵琶湖ランナーもそんなに変わらないように思えます。さらにレベルの高い、実業団やプロランナーなどいわゆるエリートランナーの場合は、2.1を切って、2.08や2.06くらいの選手もいます。以前、川内優輝選手の2016年から2018年の持久係数をこちらの記事で計算したところ、2.04から2.06くらいで、川内選手は持久型でフルマラソンの適性が高いことがわかりました。

表2.Daniel’s VDOT Calculator フル3:10~2:50に相当するHalf~1.5㎞タイム

Full

3:10 3:08 3:06 3:04 3:02 3:00 2:58 2:56 2:54 2:52 2:50
Half 91’16 90’10 89’15 88’13 87’20 86’21 85’22 84’17 83’22 82’20 81’20
10km 41’12 40’43 40’18 39’51 39’27 39’00 38’34 38’06 37’41 37’13 36’46
5km 19’52 19’38 19’26 19’13 19’02 18’49 18’36 18’22 18’10 17’57 17’44
3km 11’31 11’22 11’15 11’07 11’01 10’53 10’45 10’37 10’30 10’22 10’14
1.5km 5’23 5’19 5’16 5’12 5’09 5’05 5’02 4’58 4’54 4’51 4’47

話を戻すと、持久型かスピード型かによって、ベンチマークの値も変わります。ハーフ84分台、85分台でもサブスリー出来たというランナーもいます。このような持久力型のランナーはフルマラソンでもハーフに近いペースで走れる力を持っており30km以上の距離を十分に走りこんでいるランナーが多いです。女性ランナーの方が持久型が多いように思います。

逆にハーフ80分台でも出来なかったという例も聞いたことがありますが、さすがに80分台でサブスリーが出来ないランナーは、30㎞ペース走や30㎞距離走(ペースを決めずに30㎞走る)練習が不足しているのだと思います。長い距離を走る練習が足りないとマラソンペースにおいて脂質をエネルギー源として上手く使えないため、フルマラソンの終盤で糖質切れを起こしていると予想します。

5㎞のベンチマークになると、さらに幅広くなります。こちらのごっきーさんのブログで、5㎞18分きりと、サブスリーどちらが難しいかというアンケートをTwitterでしており、673人回答しています。結果は驚くことに、5㎞18分より、サブスリーのほうが難しいと考える人が、58%で多かったので大変驚いた次第です

私は、5㎞x2本しかやったことがないのですが、1本全力で走っても、18分30秒は厳しいと思っています。ですので、このアンケート結果に衝撃を受けました。しかし、5㎞とフルマラソンでは競技が違いすぎるため、ばらつきは大きくなるのでしょう。5km18分で走れるなら30km以上の練習頻度を上げれば間違いなくサブスリー出来ます。

このようにベンチマークはランナーの走力や特徴によって変わるので、自分なりに持つことが大事です。もし、5㎞18分30秒で走れた後のフルマラソンが、3時間2分だとしたら、5㎞の8.4倍がフルマラソンですから、2分短縮のためには、120/8.4=約14秒、5㎞のタイムを短縮して、18分16秒で走れるようになればサブスリーできるので、5㎞の目標タイムに設定して練習すれば良いのです。

有名なDaniel’s VDOT Calculatorによって得られるフルマラソン3:10から2:50までの2分単位での各距離の等価の走力を表にしました。まずは、3時間10分を切れなければサブスリーは狙えませんので、テーブルは、3:10からつくりました。自分の記録と比較して、どこかが劣っていますか?各ベンチマークの記録を一つ一つ超えていくと、サブスリーは達成できます。私の場合は、フルマラソン2:54で見てみると、ハーフ、10㎞まで近いタイムで走っています。しかし、5㎞、3㎞、1.5㎞がだいぶ遅いです。ですので、5㎞以下を強化しようと練習計画を立てています。

走力がアップすればするほど、自己ベストを出すのは簡単ではなくなります。記録が頭打ちになります。記録の壁と向き合うようになったら、フルマラソンの記録更新も、1分、2分という単位になっていきます。あまり欲張らず1-2分単位で目標設定しましょう。

サブスリー達成のためのペース配分

2010年2月の東京マラソンに始めてのサブスリーチャレンジをしてから、2010年11月の大田原での3:00:05、怪我から低迷期が5年間続いて、2016年12月のさの、2017年3月の佐倉朝日健康マラソンを得て、サブスリーを意識して走ったレースとしては、5回目の2017年11月の大田原マラソンでようやく達成しています。3時間10分きりから、8年が経過していました。

サブスリーチャレンジの5レースと、アフターサブスリーの2020年1月までのレースの5㎞ラップを表にまとめました。

表3 2010年2月から2020年1月までのサブスリーチャレンジ5㎞ラップ

  5km 10km 15km 20km 25km 30km 35km  40km Goal
(5km換算)
タイム
(NET)
2010年2月28日東京マラソン 21:25 20:25 20:35 21:03 21:32 22:32 23:42 25:12 26:46

3:09:43

2010年11月23日大田原マラソン 20:24 20:22 20:26 20:32 20:50 21:51 22:25 22:43 24:00

3:00:05

(PB)

2016年12月11日さのマラソン 21:24 20:45 21:58 20:13 21:19 20:40 20:38 23:24 27:00 3:02:20
2017年3月26日佐倉朝日健康マラソン 21:23 21:21 21:38 21:53 21:34 22:06 23:14 25:28 28:28 3:11:08
2017年11月23日大田原マラソン 21:31 20:54 21:07 21:12 21:19 21:33 21:50 20:53 20:55

2:59:38

(PB)

2018年3月25日佐倉朝日健康マラソン 20:39 20:56 20:59 21:25 21:15 21:27 21:42 24:59 24:16 3:04:03
2018年11月3日ぐんまマラソン 21:02 20:48 21:26 20:32 21:02 21:27 22:08 22:11 21:41 3:00:16
2018年12月9日さのマラソン 20:52 20:58 21:20 20:21 21:14 21:40 20:49 21:18 20:44

2:57:40

(PB)

2019年1月27日館山若潮マラソン

20:57

20:46 21:23 20:35 20:48 21:06 21:04 20:40 20:19

2:56:16

(PB)

2019年11月23日大田原マラソン 20:46 20:44 20:47 20:59 20:49 21:37 21:26 20:28 20:39 2:56:40
2020年1月26日勝田全国マラソン 20:49 20:16 20:48 20:54 20:41 20:31 20:41 20:29 20:39

2:54:18

(PB)

表の5㎞ラップをグラフにすると以下となります。7レースをピックアップしています。

縦軸は、5㎞ラップです。40kmからゴールまでの2.195kmは5km相当のペースに計算し直しています。22:54秒が縦軸の一番悪いラップなので、チャレンジに失敗したレースは、終盤のラップが22:54/5㎞より遅く35㎞または、40㎞からプロットがグラフの外に落ちて消えています。

サブスリーに失敗しつづけているランナーのラップはほとんどがこのパターンだと思います。30㎞以降または、35㎞以降で大幅に失速してしまうのが、サブスリー失敗の定番です。失敗するチャレンジャーは、また挑戦するには走力が十分でない場合が多いですが、走力が十分であっても達成できないケースでは、前半オーバーペースであることが多いです。

私のオーバーペースによる失敗例は、2010年11月の大田原マラソンです。直前の成田POPラン(ハーフ)は、84分台でしたが、今思い出してもこの時の走力はサブスリー挑戦にするにあたって十分でした。4’15/kmの30㎞ペース走も成功、レース1週間前に1㎞x10本のインターバルをレスト1分で楽々とクリアしてあと10本くらいできそうな余裕で本当によく身体が動いていました。しかし前半が20’30/5kmでハーフまで行ってしまいオーバーペースでした。32㎞から手先がしびれ始めて失速。40㎞からは完全にエネルギー切れでふんばれずにゴールまで10分以上かかり逃してしまいました。大田原のコースは前半20㎞下り基調なのですが前半にスピードを上げ過ぎました。

当日の気温を考慮できずにオーバーペースで失敗した2018年の佐倉朝日健康マラソン、この日は暑かったです。後半17℃くらいまであがりました。そのような天候では、暑さに苦手の人はフルマラソンを走ってはいけません。気温15℃の日では、10℃の日比べて、4’15/㎞で走るにしても、体力の消耗がずっと大きいです。そして、当日の体調や、コンディションとくに天気予報による気温上昇を考えて、暑ければペースを落としてレースに入ることが大事です。当たり前のことなのですが、最近になって気温が高くなる可能性が高い3月はフルマラソンを走るべきでないことに気付きました。詳しくは、フルマラソン記録を出しやすい年間レース計画をご覧ください。

逆に初のサブスリーに成功した2017年11月の大田原マラソンと、自己ベストを出した2019年1月館山若潮マラソン、2020年1月の勝田全国マラソンなどは、35-40kmで加速出来ています。マラソンは35㎞からです。35kmからロングスパートできるようなペースで走ることが自己ベストをだすための秘訣です。ゴールまで残り7kmだと走り切れるペースが予測出来ます。失速の不安なくペースを上げられます。落ちてくるランナーをすばすば抜かしていけるので気分よく走り切れる効果もありゴールまで全力を出し切れます。

2019年度の世界のトップランナーのレース結果をみても35kmからのロングスパートの傾向は如実です。詳しくは日本のトップランナーが世界に挑むために行うべきことをご覧下さい。マラソンは後半タイムが落ちるもの、どれだけ落ち込みを抑えるか、という発想はもう古いです2時間1分台まで記録を更新している2019年のトップランナーの5㎞ラップをみて、35㎞からペースを上げて目標を達成するのがマラソンと頭を切り替えましょう。

では、35㎞からスパートできる程度のぎりぎりの適正ペースはどうすればわかるのでしょうか?どのくらいのペースなら、イーブンで走れるのか、それまでこなしてきた練習のベンチマークをみて決めることになります。直前のハーフマラソンに自分の持久係数をかけて得られる設定タイムで平均ラップを設定するのが良いです。詳しくは、ハーフ/フルマラソン時給係数とペース配分をご覧ください。ハーフとフルは、エネルギー源のうち最も重要なグリコーゲン(糖質)がレース中に枯渇するかしないという点で異なります。違う競技なのですがフルマラソンに最も近い競技なので、ベンチマークとしては最適です。

サブスリー挑戦するけど失敗する人は、本当は無理なことがわかっていてもサブスリーペースで突っ込んでしまう例があります。その場合は、3:03とか、3:05に目標設定を切り替えたほうがずっと、価値のあるレースになります。

とはいえ、大人の競技は、他人がどういっても決めるのは本人ですから、撃沈上等という人はどうぞ突っ込んで糖質が枯渇したレース終盤どうなるかを身をもって体験するのも良いでしょう。私も、図1のグラフで2010年の東京マラソン、大田原マラソンや、2018年の佐倉朝日健康マラソンでその経験しています。但し、痛い目にあったら、同じ繰り返しをしないことを考えましょう。

さらにペース配分を考えるうえで当日の天気予報による考慮も大事です。体調は絶好調でも、当日の天候が想定外に暑くなったり予定通りいかない場合があります。私は2018年のレースからは設定ペースは意識しつつ、胸に巻いた心拍ベルトの値をGarminに表示させて心拍計を見ながらペース調整をしています。この点については、心拍計をつかったフルマラソンのペースコントロールで詳しくまとめているので、ご覧になってください。心拍計をつけて走るのが嫌な人は、レース中でも首の頸動脈で脈拍を15秒ほどカウントして4倍して心拍数を知ることも出来ます。心拍計はおかしくなることもあるので、私はこの方法でレース中、もちろんペースは維持したまま脈を測ることもあります。

2018年11月のぐんまマラソン、後半暑くなってハーフの時点で想定した心拍数を超えてしまったのですが、30㎞からの失速を最小限に抑えて、35㎞から40㎞もほぼ同じペースでねばり倒し、ラスト2.195㎞は加速しています。記録はネットタイムで3:00:16でサブスリーに及びませんでしたが、気温があがって前半想定以上に体力をつかってしまっても、ダメダメ大失速は回避する走り方を覚えた価値あるレースになりました。自分史上もっとも力を出し切った実感があるのがこのレースです。きついなと感じるだいぶ前に、心拍数を見て意識的にペースを落としていったのが正解でした。

サブスリー実現のためのトレーニング

サブスリーを狙う目標レースを決めましょう。2020年秋シーズンは残念ながら市民マラソン大会はすべてなくなってしまうかもしれません。一般的には11月か12月に本命大会を持ってきます。今年は大会が中止になることを見越して2020年12月13日(日)に小金井公園で少人数のサブスリーチャレンジ走(無料)をやりますので、よろしければご連絡ください。

サブスリーを狙う人は、3:10を切ってから狙いましょう。もっと言うと3:05を切ってから意識すべきかもしれません。何度か挑戦して失敗している人は、5㎞のレースや10㎞のレースやタイムトライルをして自分をベンチマークしましょう。

次に最後に走ったフルマラソンから、Daniels’sのVDOT Calculatorのequivalentの5㎞、10㎞のタイムと、自分の記録を比較しましょう。例えばフルマラソンが3:04であった場合は、VDOTCalculatorのequivalentは、10㎞:39’51、5km:19’13となります。自分のタイムトライアルの記録より速いかどうかを比較します。10㎞:39’51、5km:19’13より速い場合は、スピード以上に、持久力が不足しているということになります。遅い場合は、スピードが不足しているとなります。VDOT Calculatorは絶対的なものではないですが、一つの目安として使う事は出来ます。

この事実をベースに練習計画を立てると良いでしょう。

例として、12月に本命レースがある想定で、4-5月までのメニュー、6月-8月までのメニュー、9-11月までのメニューを紹介しておきます。4-5月は、スピード強化する場合と、基礎の長距離の走り込みをする場合かによって二つに分けました。フルマラソンのタイムからVDOT Calculatorの5㎞、10㎞より実際の記録が上回ったスピードランナーは、基礎の走り込みを重視したほうが良いでしょう。または、3月を休養期間に当てたランナーも、走力が落ちているので基礎の走り込みをやったほうが良いです。身体の調子も良く怪我もなく4月を迎えて、スピード不足と感じているランナーはスピード強化メニューに取り組んだ方がよいでしょう。

以下は土日がお休みで比較的長く練習時間を取れるランナー向けのメニューとしています。土日がお休みでない人は適宜アレンジしてメニューの参考にしてください。

4月―5月のサブスリチャレンジ練習メニュー(基礎走り込みメニュー)週65-70㎞

30㎞走

(ペース任意)

休養

補強+5㎞ジョグ
(ペース任意)

10㎞ジョグ

(5’00~5’30/km)

補強+5㎞ジョグ
(ペース任意)

休養

または10㎞ジョグ(ペース任意)

補強+15~20㎞ペース走
(4’40-50/km)

4月―5月のサブスリチャレンジ練習メニュー(スピード強化メニュー)週52㎞

4’00~3’50/km

1kmインターバル5本
(つなぎ200mジョグ、75-90秒)

休養

補強+5㎞ジョグ
(ペース任意)

82秒~86秒/400mインターバル10本
(つなぎ200m 90-120秒)

補強+5㎞ジョグ
(ペース任意)

休養

or

10㎞ジョグ(ペース任意)

補強+20㎞ペース走(4’40-50/km)

6-8月メニュー(週50㎞~76㎞)

25㎞-30㎞クロカンまたは
ロード、アップダウンが多いコース
(ペース任意)

休養

補強+5㎞ジョグ
(ペース任意)

15㎞ジョグ
(キロ5’15~6’00)

補強+5㎞ジョグ
(ペース任意)

休養

or

10㎞ジョグ(ペース任意)

4’00/km

1kmインターバル5本
(つなぎ200mジョグ、75-90秒)

9-11月メニュー(週61-71㎞)

20㎞or30㎞ペース走
(4’40/km~4’20/km)or
20-30km 距離走(ペース任意)
休養

補強+5㎞ジョグ
(ペース任意)

15㎞ジョグ
(キロ5’15~6’00)

補強+5㎞ジョグ
(ペース任意)

休養

or

10㎞ジョグ
(ペース任意)

20㎞ジョグ(5’15/km ~5’30/km)

or

4’00~3’50/km

1kmインターバル5本
(つなぎ200mジョグ、75-90秒)※

※)気温が低くなり大会が近づくにつれてインターバルメニューの強度をあげていきます。詳しくはインターバルトレーニングの意義から効果的なメニューを考えるを参照ください。

持久力不足の場合、1㎞(3’55~4’00/kmx10本 200mつなぎを1分まで短縮)、(2㎞3’55~4’00/kmx5本 400mつなぎ2分から2分30秒)or  5㎞(19’10~50)2本(休憩10分)、3㎞(4’00/km)-2㎞(3’55/km)-1㎞(3’50/km)(つなぎ200m、120秒)などスピードは上げずに、本数を増やして距離を長くする、レストを短くするインターバルが効果的です。涼しくなるに併せて本数も上げて行きましょう。

スピード不足の場合 400m(82-84秒)10本(つなぎ200m、75-90秒)、200m(40秒)15本(つなぎ200m 75-90秒)、1㎞レペ(3’40/km 5本、休憩4分)など、短い距離を速いスピードで疾走する、レストを長くとりスピードをあげる。また、3km(4’00/km)-2km(3’55/km)-1㎞(レペ 3’40/km以上)(つなぎ200m、150秒〜180秒)なと、ビルドアップする練習などが有効です。

スピード練習は怪我しやすいです。練習中に少しでも身体に異変を感じたら練習は打ち切りましょう。練習後はストレッチを入念に行いましょう。

土曜日にスピード強化メニューをした場合は、日曜日はペース任意の20-30㎞距離走。日曜日にペース走をポイント練習として行う場合は、土曜日はジョグにするなどして、ポイント練習を内容の濃いものにしましょう。

平日にインターバルをする時間がとれるなら、水曜日にインターバル、日曜日はペース走などの練習にすると良いでしょう。9月以降は、週1回はスピード系のトレーニングをしたほうが良いです。

補強のメニューはそれぞれ弱いと感じるところを強化するのですが、私がやっているのはバービージャンプ15回、スクワット50回、腕立て20回、脚揚げ腹筋20回、背筋20回を3セットなど機材なしで出来るものにしています。平日補強をやる日は走る時間を短くしています。平日トレーニング時間は1時間程度に抑えるためにそのようにしています。

4-5月は、スピード不足の場合と、持久力不足の場合で二つメニューをつくりました。スピードメニューを1か月継続して、5㎞、10㎞タイムトライアルをすると必ずタイムはよくなります。またベンチマークして練習メニューを見直ししましょう。

6-8月は、日本は暑くて充実した練習をすることは出来ない前提でメニューをつくっています。自宅近くにクロカンコースなどがあるランナー、比較的涼しいクロカンコースでの練習をお勧めします。早朝や夜の比較的涼しい時間帯を使って、スピード練習を週1回は継続したほうが良いですが、連日暑すぎる場合は、その週はスキップさせても問題ありません。スピード練習は疾走スピードを落として練習するのが現実的です。

フルマラソンをターゲットにしているなら、理想的には毎週30㎞練習をしたいところです。しかしいろんな事情で無理であれば、隔週にしたりすることなどで、暑い夏も継続することをお勧めします。特にスピードは十分にあるのに、サブスリーが達成できないランナーは、30㎞走をどれだけ実施したかが結果に直結すると考えて継続すべきです。9月まではペースは必ずしもあげる必要はありません。

9月-11月で紹介したメニューは、かなりハードで失敗するメニューも多いでしょう。とくにペース走は、レースペースと同じレベルまでペースを上げると自信になるのですが、失敗するリスクがかなり高いです。距離は30㎞~35㎞くらいがちょうど良いです。長すぎるとダメージが多く、回復に時間がかかり、翌週のポイント練習まで影響してしまいます。20㎞や25㎞だと距離が足りず、本番で42㎞走る自信につながりません。ペースは、9月、10月はまだ暑いので、4’40/kmくらいから設定して、涼しくなってきたら、4’30/km、4’20/kmと上げていくのが良いでしょう。無理に4’10/kmや4’15/kmまで上げなくてもだいじょうぶです。失敗してペース走くずれにしないことが重要です。

9月-11月の3か月がどこまで追い込めるかによってサブスリー達成可否が決まります。厳しい練習を一人で継続するのは難しいので練習会に行ったり大会やタイムトライアルに参加して、練習メニューを試すと良いでしょう。そして結果からベンチマークを見直して持久力が足りないのか、スピードが足りないのか見直しして、再び練習メニューをアレンジして行きましょう。

ペース走では、身体が固くならないように無駄なエネルギーを使わないようにしましょう。一定ペースでエネルギー最小で走ることを意識しましょう。レース本番で肩が凝るようなランナーは無駄に体力を使っていてロスが多いです。腕の位置を下げるとか、空中で力を抜くとか、力が入らないような走り方を覚えることが重要です。

本番は12月の想定のメニューでしたが、レースの3週間前から練習の頻度を変えずに距離や本数を短くしていき、最後の1週間は休養を増やして十分に疲れをとり本番に臨みましょう。

まとめ

  • サブスリー達成のために、フルマラソンの記録だけではなく、ハーフ、10㎞、5㎞、3㎞などのタイムトライアルを実施して自分の走力をベンチマークすることが大切です。Daniel’s VDOT Calculatorで得られる記録と比較して、スピード不足か、持久力不足かを把握することが重要です。
  • 走力が十分あってもサブスリーがなかなか達成できないランナーは、ペース配分を誤っている場合が多いです。前半に貯金をつくって、後半の落ち込みを最小にするという発想よりも、35㎞以降にペースアップしてスパートするというペース配分が記録につながります。これは、世界のトップランナーを見ても実践していることです。
  • 4-5月、6月―8月、9月―11月と12月に本命レースがあるとしてサブスリーチャレンジメニューをつくりました。ベンチマーク結果から弱い部分を意識して強化すべきです。

以上(2020年4月28日)

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    小平市在住の50代男性のkamihooです。40歳から本格的にフルマラソンの大会に参加し始めて、2017年11月に48歳で大田原マラソンでサブスリーを達成しました。自己ベストは2020年1月の勝田全国マラソンの2時間54分37秒です。「ジョグのねっとわーく」でランニング日記をkamihooのアカウントで公開しています。https://jogno.net/

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