*)読んでくれた方から、Repetitionは「競争」ではなく「繰り返し」ですとご指摘いただきまして、修正しました。思い込みで恥ずかしいミス失礼しました。
*)レペ=乳酸を出す=速筋の強化、インターバル=乳酸をつかう=遅筋の強化を解説に加えました。(2019年12月23日)
*) さらなる走力アップトレーニングの②が間違いがありましたので修正しました。疾走距離を短くするショートインターバルは、疾走速度を上げないとスピード強化にはつながりませんが間違っていました(2020年3月16日)
前回、長距離競技におけるエネルギー源と、血中乳酸濃度について考えるで、血中乳酸濃度を高める解糖系無酸素運動が中心になるOBLA以上の高強度の運動、解糖系と持久系のバランスしているLT以上OBLA以下の中強度の運動、持久系中心のLT値以下の低強度の運動の分類して、目的別のトレーニングについて説明しました。
LT値や、OBLA以上のペース走よりも効率よく持久力を鍛える方法がインターバルトレーニングです。
今回はインターバルトレーニングとレペの違い、その目的、走力に併せて設定ペースなどについてまとめます。インターバルトレーニングで持久力を強化すると5kmのレースを速く走れるようになり、その結果はハーフマラソンやフルマラソンの結果にもつながります。かなり踏み込んで書きましたが、解釈が間違っている説明を見つけたらご指摘いただけますとありがたいです。
以下、心拍数を使った説明をしますが、心拍数を測りたい人は、Garminの時計についている内蔵の光電式はあてにならないので、胸の下にまくストラップ型の心電式のオプションを購入して測ることをおすすめします。
以下の流れで説明します。
目次
インターバルトレーニングとは?レペとの違い
インターバルトレーニングは、レースペース以上の一定速度で設定した距離を疾走、一定の間隔のジョグで、持久系トレーニングを継続する程度に心拍数をさげて、3本から10本程度繰り返す練習です。設定距離を一本毎に長短変えたり、設定タイムを一本毎に変える変速インターバルもあり必ずしも設定は、一定では有りません。インターバルは日本語では間隔の意味です。疾走もジョグのつなぎも設定距離、設定速度通りに走るのが理想です。
同じような練習にレペがあります。レペはレペティションの略で”繰り返し”の意味です。設定した距離を全力で繰り返し走る練習です。インターバルとの違いはレペの場合、1本だけ行うこともありますが、2本以上5本以下行うこともあります。レペも設定距離、休憩時間を一定として設定速度通り走るのが理想です。
レペの方がインターバルよりも疾走の時間のペースは速いです。レペを何本か行う場合は、間の休憩はジョグとは限らず運動を停止してインターバルより長い時間休憩して心拍数を110以下まで下げます。インターバル、レペの疾走距離は、どちらも1kmが一般的ですが、200mや400mのショートもあれば、2kmや5kmの設定もあり、様々な練習の組み立てが出来ます。
インターバル、レペの目的
インターバルは、レペよりは強度が低く、OBLA以上で疾走して、LT値以下のジョグでトレーニングを繰り返すことで、遅筋による乳酸消費能力を高めて心肺機能を強化して、LT値における運動強度をあげて主に持久力を強化するトレーニングです。図1の→の方向にカーブを動かす。
レペは、OBLA以上の高強度の運動で、無酸素運動の比率が高い運動状態で疾走します。速筋による乳酸生産能力を高めて血中乳酸濃度を最大限にあげて、有酸素運動では出来ない運動をすることでスピードを強化するトレーニングです。乳酸カーブを上に引き上げるトレーニングです。図1上の↑の方向にカーブを動かす。
レペは疾走開始直後から無酸素運動のペースで走り心拍数を上げつつけて、疾走の最後にさらにラストスパートで心拍数を上げ力を出し切ります。 レペは、1本目から心拍数を高くして、レストは十分に休み、心拍数110以下まで下げます。2本目以降も疾走時の心拍数は大きくは変りません。インターバルはジョグのつなぎが短いためラストスパートするとつなぎのジョグで心拍数が落ちずに次の疾走でペースを上げられなくなりますのでラストスパートはせず、最初から最後まで一定スピードで走ります。 インターバルとレペのときの心拍数を見ると、図1にあるように、インターバルはつなぎのジョグによるレストが短く本数を重ねながら心拍数は上がっていきます。レストでも有酸素運動を継続する心拍数まで下げたら次の疾走を行います。
インターバルとレペの有酸素運動、無酸素運動の比率は、有酸素の割合はインターバルの方が高く、2本目以降は心拍数が高い状態で疾走するため最初から有酸素運動が中心で走り始めます。レペは、インターバルに比べて、有酸素運動の比率が低く、最後にスパートする際さらに無酸素の比率が増えます。十分に休憩して2本目以降も疾走するため立ち上がりは無酸素運動からスタートします、
実際に私が2019年7月20日に行った1㎞ x 7本@3’50インターバル+400mレペ1本の練習のときの心拍数が図4です。つなぎのジョグ間隔は、70秒から90秒で行いました。疾走してから500mくらいまでは心拍数はあがりますが、以後は有酸素運動が中心ではあるが、無酸素運動もつかう程度の一定ペースで、心拍数は緩やかにあがります。2本目でOBLAの心拍数155bpmを超えて、以後は172bpmまで上げ最後の400mレペで175bpmまであがっています。つなぎのジョグは、最後まで自分のLT値である心拍数140bpm近くまで落としていますが、極端には落としておらず有酸素運動を維持しています。
次に、2018年7月14日に1500のレペ3本を行った際の心拍数が図5です。最初の500mで急激に心拍数があがり、有酸素運動だけではなく無酸素運動の比率を大きくしながら、乳酸がたまっていく状態でその後も心拍数はあがりつづけて、最初の1本で私のOBLAの155bpmを超えて157bpmです。2本目で、165bpm、3本目で167bpmと高いです。なお記録は5’15,5’10,5’13でした。1本目は少し軽めに入ってしまいました。1本目から160bpm超えるくらいまで上げるのが理想でした。休憩は、ジョグしたり止まったりして15分ほど休んで、心拍数を110bpm以下まで下げて、2本目以降も急激に心拍数をあげて同じような曲線になっています。
なお400m以下のショートインターバルは何を強化するのかというとスピード強化が主たる目的です。400mだと立ち上がりの無酸素運動から有酸素運動が主たる運動になる前に終わってしまい、本数を重ねないと心拍数は上がっていきません。本数を重ねると心拍数もあがっていき、心肺機能を強化されますが、無酸素運動による必要な身体能力の強化、スピードの強化がメインになります。400m以下のレペは400m以下のインターバルとさほど変わらずより無酸素運動で速く走るための身体能力の機能の強化ということになります。設定本数や、レストの時間によって効果は変りますが、概ね下記のように整理することが出来ます。
心肺機能の強化=持久力アップ(乳酸利用能力強化) 1㎞インターバル , 1㎞レペ > 400インターバル > 400レペ
速く走るための身体能力強化=スピード強化(乳酸出力能力強化) 400レペ , 1㎞レペ > 400インターバル > 1kmインターバル
インターバルトレーニングの設定
インターバルの設定どうすれば効果的にトレーニングできるか考えていきます。
表1.Daniels VDOT Calculator によるマラソン記録別の各トレーニング設定
マラソン記録 |
4:00 | 3:50 | 3:40 | 3:30 | 3:20 | 3:10 | 3:00 | 2:56 | 2:50 | 2:40 |
Easy下限 | 6’35 | 6’20 | 6’06 | 5’51 | 5’35 | 5’21 | 5’06 | 5’03 | 4’53 | 4’36 |
Marathon | 5’41 | 5’27 | 5’13 | 4’59 | 4’45 | 4’30 | 4’16 | 4’11 | 4’02 | 3’47 |
Threshold | 5’11 | 4’59 | 4’47 | 4’35 | 4’23 | 4’11 | 3’59 | 3’56 | 3’48 | 3’36 |
Interval | 4’46 | 4’35 | 4’24 | 4’13 | 4’03 | 3’51 | 3’40 | 3’37 | 3’31 | 3’19 |
Repetition | 4’31 | 4’20 | 4’09 | 3’58 | 3’48 | 3’36 | 3’25 | 3’22 | 3’16 | 3’04 |
上記は、有名なDaniels VDOT Calculatorによって、フルマラソンの記録が、4時間から2時間40分までのタイムの際の、Easyペース(その下限)から、Repetitionまでの設定タイムを表にまとめました。Danielsさんのインターバル設定は以下のように説明しています。
Intensity: Generally in the range of 95-100% of VO2max or 98-100% of HRmax. Intervals are “hard” but not all-out running by any means. Usually at a pace that you could maintain for about 10-15 minutes in a serious race. Intervals are best if they involve runs of 3 to 5 minutes each (800m and 1000m workbouts are typical), with jog recoveries of similar duration (not necessarily, equal distance); relative to the runs they follow. If a workout calls for “hard” runs, then go by feel and imagine 5k race pace, as he intensity of each run.
「最大酸素摂取量の95-100%の強度で、最大心拍数98-100%のレンジで行うが、ヘトヘトにならない程度。通常10分〜15分のレースで走れるペース。疾走は典型的な例として800m-1㎞で3~5分、つなぎのジョグも3-5分と疾走時間と同じだけとる」と説明されています。
Purpose: Stress your aerobic power (VO2max).
It takes about two minutes for you to gear up to functioning at VO2max so the ideal duration of an “Interval” is 3-5 minutes each.
The reason not to go past 5-minutes is to prevent anaerobic involvement, which can result in blood-lactate build-up.
「目的は有酸素運動のパワーに刺激を与える。VO2Max(最大酸素摂取量)で心肺が機能するまで、2分かかるので理想のIntervalは、3-5分の間隔である。5分以上やらないのは、血中乳酸濃度があげる無酸素運動を巻き込まないため」と説明されています。
しかし、市民ランナーが、最大心拍数近くまで平地のインターバルであげるのはかなり難しいです。1回目の疾走でそこまで心拍数を上げることはでぎません。無理があるように思えます。また、3分以上つなぎのジョグでペースを落とすと、心拍数は110以下まで下がり、次回疾走が、また無酸素運動から開始になり心肺機能の強化の目的は薄れます。Danielsさんのインターバルは、レペに近いトレーニングのようです。
LT値はフルマラソンペースで、OBLAは、ダニエルズさんのThresholdのペースが参考になります。OBLAのペースでは、インターバルの疾走の速度として、ダニエルズさんのThreshold(OBLA)程度、Interval以下の速度に設定するのが適度で、つなぎのジョグはEasyペースより遅く疾走の1.5倍程度のペースで良いでしょう。疾走が1㎞以下ですと、ジョグは200m が適度です。最初はオーソドックスに5本からスタートするのが良いです。
- サブ4レベル : 疾走5’11 つなぎジョグ200mで1’27
- サブ3.5レベル : 疾走4’35 つなぎジョグ200mで1’22
- サブ3レベル : 疾走3’59 つなぎジョグ200mで1’11
この設定ですと良く練習している人は、少しもの足りないかもしれません。設定どおり、疾走、つなぎのジョグの時間で最後まで走り切ることが重要ですので5本最後までいけるかつなぎの時間も含めてチェックしましょう。一度やってみて少し設定が遅いと感じたらペースを5秒ずつあげてみるのが良いでしょう。練習頻度としては、週1回、多くても週2回が良いでしょう。それ以上は怪我をしやすくなるのと、疲労が抜けずに疾走のペースがあがらないインターバルになってしまいます。暑いと感じる日にインターバルはおすすめしませんが、やるのであれば、設定は10秒以上遅くするのが良いでしょう。 できれば、心拍計を使って心拍数の上下がどの範囲にいるのかをチェックしましょう。自分のOBLAやLT値がわかってくると設定が適切かわかり良いでしょう。暑い時に、疾走スピードを10秒下げて同じ本数を行っても心拍数は同じようにあがります。同じだけの負担を身体にかけており、心肺機能の強化されて持久力は向上します。
さらなる走力アップのためのインターバルトレーニング
次に、インターバルトレーニングでさらに走力アップをめざす上でのどう設定を変えればよいか考えていきます。
表2.インターバル設定と影響 | 心肺機能の強化 | スピードの強化 |
①合計疾走距離、設定スピードは同じで、本数を減らし疾走時間、つなぎジョグ時間を長くする 1㎞@4’00x6本 つなぎ200m 1’30 → 2㎞x3本 つなぎ400m 3’00 |
↑ |
- |
②合計疾走距離、つなぎジョグは同じで設定スピードをあげて、本数を増やし疾走時間を短くする 1㎞@4’00x5本 つなぎ200m 1’30 → 400m@3’50/kmx12本 つなぎ200m 1’30 |
- |
↑ |
③疾走スピード、つなぎジョグ時間は同じで本数を増やす。 1㎞@4’00x5本、ジョグ200m1’30→1㎞@4’00x8本、ジョグ200m1’30 |
↑ |
- |
④合計疾走距離、本数、つなぎジョグの時間は同じで疾走スピードをあげる 1㎞@4’00x5本 つなぎ200m 1’30 → 1㎞@3’55x5本 つなぎ200m 1’30 |
↑ |
↑ |
⑤合計疾走距離、本数は同じで、スピードをあげて、つなぎのジョグの時間を長くする。 1km@4’00×5本、ジョグ200m1’30→1㎞@3’50x5本、ジョグ200m2’00 |
- |
↑ |
⑥合計疾走距離、本数は同じで、つなぎのジョグの時間を短くする。 1km@4’00×5本、ジョグ200m1’30→1㎞@4’00x5本、ジョグ200m1’00 |
↑ |
- |
インターバルの練習メニューの組み立ては、まずは、1km 5本のスピードで安定して走れる設定を見つける事です。④のように疾走スピードの設定を上げられればまだまだ設定がぬるかったということです。つなぎのジョグの時間が1’15以内で設定で最後まで走ることが出来れば、恐らく大会や記録会では、その設定のまま5km連続して走れるでしょう。
さらなる走力アップのために設定を上げるためには、距離・本数・つなぎ時間の設定は同じ設定で、④のようにペースを上げたいところですが、なかなか簡単には行きません。心肺強化を強化して持久力をつけたい場合は、①③⑥の設定があります。①疾走総距離は変えずに、疾走時間とつなぎのジョグの時間を長くとり、本数を減らす。③設定変えずに本数を増やす。⑥つなぎのジョグの時間を短くするなどが、心肺への負担が増えて、持久力がアップします。スピードを強化したい場合は、②⑤など、①400m、12本など疾走総距離は変えずに疾走時間を短くして疾走速度を上げる、⑤つなぎのジョグの時間を長くして、疾走スピードを上げるなどです。走力がアップすると、疾走速度もあがり、本数も、つなぎのジョグの時間もかわらず、④が出来るようになります。
持久力を重視するか?スピードを重視するかは、目標とする大会をどの距離に定めるかにより変わります。また、自分の練習仲間の同じような走力のライバルと比べて、持久力が劣るのか、スピードが劣るのかなども参考になるでしょう。
どちらも強化したい場合は、心肺機能の強化の①③⑥のアプローチと、スピード強化の②⑤を設定を交互に変えて行うなどが考えられます。
よくあるまずい設定の例は、設定スピードをやたらに速くして、つなぎのジョグの時間を長くする練習ばかりになることです。疾走時間の合計が短いと持久力にはつながりません。本数を5本やれれば、レペに近いインターバルとしての練習になり良いのですが、3本だけなど疾走時間が短くなると 持久力にはつながりません。 速くなった気がしますが、決して、5㎞連続して走ることは出来ません。そういう練習があっても良いのですが、持久力もアップをしないと、なかなか5㎞、10㎞のレースなどの成果につながりません。
フルマラソンをターゲットにするなら設定スピートとして、フルマラソンのレースペースの1㎞あたりのラップより、40秒〜30秒以上速いペースでインターバルトレーニングする必要はありません。サブ4なら5’00、サブ3.5なら4’20、サブ3なら、3’45以上のスピードでインターバルの疾走の設定をする必要はありません。むしろ設定本数を増やす③や、つなぎのジョグの時間を短くする⑥が有効です。私のサブスリを達成したとき4’00/1㎞で、1分のつなぎジョグで10本出来たら10㎞レースで39分は以内で走ることが出来て、サブスリーも実現できました。心拍数が下がるのが早い(乳酸利用能力が高い)というのが持久力を強化の大事な要素ですので、疾走スピードをあげるばかりではなく、つなぎの時間を短くするインターバルにも取り組んでみてください。
まとめ
- インターバルトレーニングは主に心肺機能を強化するトレーニングで、レペは主にスピードを強化するトレーニングです。
- インターバルとレペの違いは疾走スピードの差と、レスト(つなぎのジョグ)の時間に違いがあります。
- インターバルトレーニングの設定は、OBLA(Daniels VDOTのThreshold)以上の速度で疾走して、その1.5倍の速度のジョグでつないで走るのが良い。
- さらなる走力アップのためのインターバルトレーニングでは、持久力をアップするか、スピードをアップさせるか目的によって設定が異なる。
以上(2019年7月25日)
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